本

『夫をうとましく思う妻の心がわかる本』

ホンとの本

『夫をうとましく思う妻の心がわかる本』
監修柏木惠子
講談社
\1365
2007.8

 恐い本である。私など、頁をめくるたびに、心臓が痛くなった。
 家族心理学などについてのベテランの先生が監修している。恐いほどに、夫婦間の心理をご存じなのである。
 私たちは、宗教的な問題もあって、こうした心の奥底の問題については、かなりフランクに語り合っているほうだ。それでも、あるいはそれだから、この本に書いてあるような問題は、互いに話し合いをするなどして、意識してきたつもりだった。それでもなお、私はこの本に紹介されるような夫のように、妻からすればムカつくようなことを、かなり平気でしているということを、改めて思い知らされる。
 聖書は、その中に自分の姿を見つける本である、とも言われる。そうでなければ、救いはない。この本も、ここに自分が描かれている、と感じるはずである。少なくとも、夫という立場を何年か過ごしてきたならば。
 分かっているつもりでも、つい、そのようにしてしまう。夫の側では、まあこれくらいいいか、で済ましているところへ、妻の側にはストレスが溜まっていく。そんな構造も感じる。いや、できるならば否定したいのであるが、正直言ってできないものである。
 そういうわけで、いくらそれなりの意識をしているのであるにしても、夫がこの本を開くと恐ろしい。あまりに恐ろしくて、目次や内容をここに紹介するのも憚るほどである。
 聖書であれば、人間として自分かいかに罪まみれであるかを思い知らせるのと同時に、そこから救われるというのはどういうことか、ちゃんと示してある。だが、この本には、どうやら救いがない。なんとか、最悪のシナリオを避けるための知恵は記してあるが、結局愛情は戻らないというのが前提となって、最後までいってしまう本である。せいぜい、「穏やかに暮らす」ことくらいしか、目指すところはないのである。それほどにまで、妻たる者は、もう夫に絶望しているということなのか。そうなのだろう。
 夫はそれでも、いい気なもので、自分は愛されている、愛されるべきだ、などと幻想を抱く。いい気なものだ。
 先日テレビで、こういうのがあったそうだ。見知らぬ異性から突然「一目惚れなんです」と告白されたらどうするか、という実験をしたというのだ。告白された女性たちは、殆ど警戒の塊でしかなかったが、告白された男性たちは、でれでれしてそれを受け入れる方向に傾いたというのだ。男は本当にバカだ。
 この本は、使用上の注意をよくお読みの上ご利用ください、という感じだ。だが、いかに恐くても、夫を長く務めたいと思うので有れば、この内容くらいのことは、承知しておかなければならないだろう。
 それともう一つ。これから結婚をする、あるいはするであろう人は、この本を開くのは、今はやめておいたほうがよいだろう。この本とは違う路線で、愛を貫いてほしい――などと言うことがすでに、男のバカさ加減を露呈しているのかもしれないけれども。




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