本

『目からウロコの心理学』

ホンとの本

『目からウロコの心理学』
齋藤勇
PHP研究所
\1575
2006.6

 シリーズ名だから仕方がないが、「目からウロコ」という言い方が適切であったかどうかは、分からない。
 前半はいたって真面目な、心理学の系統だった解説である。1項目を2頁から4頁程度にまとめ、話題を切り替えていく、最近の手法を使っている。そのうち、頁の半分をイラストや図解に用いるというのも、ありがちである。いつの間に、読み手は、こんな週刊誌的・視覚的な説明でなければ読もうとしなくなったのだろう、と思う。
 心の病から、深層心理、知覚の不思議というふうに展開して、人格の成長について説明がなされていく。
 関心のある人は面白いだろうが、このあたりまでは、ある程度知識がある人は、退屈なことが多い。それほど真新しいことが書かれているわけではないからだ。
 ところが、本の終わりのほうになると、なんだか楽しくなる。むしろこれを前半にして、ウリにしてもよかったのでは、とさえ思う。
 人間関係の秘密があばかれ始め、日々の生活に役立ちそうなことが並べられると、ありがちな心理学の説明とは違う、ちょっとバラエティ番組的な面白さが加わってくる。
 最後に、勉強法に関する心理が述べられるけれども、これなんか、学生は大いに参考にしたらいいのではないか、と思う。しかし、これを参考にできるくらいの理解力や経験のある人は、すでに学生ではなくなっている可能性が高い。
 というわけで、教師などには案外ためになるのかもしれない。ただし、こういう心理学を、素人が振り回すことほど、危険なことはない。医学の本を読かじっただけの素人が患者を治療することができないように、心理学の本を読んで分かった気になった者が、人の心を左右することなどは、できないし、許されるものではない。
 でも、モテる秘密などもあれば、使ってみたいのはやまやまだろう。
 それはそうと、この「目からウロコ」は聖書の使徒の働きでのパウロの姿に由来する言葉である。「豚に真珠」や「狭き門」など、元の意味をどれほど保っているかどうかは、いずれも疑問ではあるけれど。




Takapan
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