本

『プロ野球ユニフォーム物語』

ホンとの本

『プロ野球ユニフォーム物語』
文・綱島理友
絵・綿谷寛
ベースボール・マガジン社
\7350
2005.4

 野球を愛するとはどういうことか、まざまざと思い知らされたような気がした。
 すばらしい調査であり、レポートだ。日本のプロ野球ファンは、ぜひ一度覗いて戴きたい。
 日本プロ野球の各チームの歴代のユニフォーム。新チームなどの時はともかく、マイナーチェンジだと、そのチームのファンでなければニュースにも注目しないものであろう。だが、大切なユニフォームのことだ、どこかにまとまった記録があるはずだ――綱島氏は、そういう思いで調べたところ、これが全くない。ならば老後にでも楽しみで調べてみるか、と思いきや、日本のプロ野球創成期のことを知る人が亡くなっていく現実を考えると、急いで仕事をなさなければならないと気づいた……。
 野球を愛するとはどういうことか、教えられていく。古い写真の色についても、尋ねまわり、どうしても分からない部分は白黒写真をコンピュータ解析するなどして、割り出していく。気の遠くなるような作業であろう。
 もちろん、たんにこれはユニフォームのデザインについて調べた本ではない。そのときチームがどうであったか、そのとき日本のプロ野球で何が起こっていたか、すべてを掘り起こすため、これはプロ野球史としても優れた読み物となっている。
 そして、一球団だけ集めたものをファンに提供したらどうかという声にも反対し、各チームはそれぞれ互いに他と支え合って野球をつくっているわけで、切り離すことはできない、と、百科事典のような合本にて出版することとなったらしい。
 この2004年からの球界再編についても載せられている。ソフトバンクについて、私は「福岡」が消えていく現実に危惧を覚えていたが、著者も同じであった。それどころか、地域密着と口では言いながら、地元の都市名を縮小していくことへの強い批判を展開している。それは、オリックスや楽天についても同様であった。
 野球を愛するとはどういうことか、考えさせられる。
 因みに、この人のホームページについて、私は以前から知っていたのであるが、こんなに見事な書物へと集大成されていくとは、思ってもみなかった。良い本に巡り会えた。




Takapan
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