本

『宇宙その始まりから終わりへ』

ホンとの本

『宇宙その始まりから終わりへ』
杉山直
朝日新聞社
\1,200
2003.6

 宇宙論が密かに流行っているという。誰だって、宇宙の存在は不思議なものだ。カントではないが、空を見上げるだけで、星空が宇宙の神秘を伝えるし、存在についての疑問が頭を過ぎるようになる。それを神話や伝説で満足しようとはしない現代人は、新たな宗教であるとも言えるような、宇宙の誕生や死についての話に耳を傾けていってしまう。
 四年生に、生きることのすばらしさをテーマに作文を書かせたところ、何人か、なぜ生まれたのか、なぜ死ぬのか、といった疑問を綴る子がいた。プラトンではないが、先天的に子どもが感じ取って知っていると言われる事柄の中に数えられるかもしれないような疑問であるが、だからなおさら、聖書によって説明していくことの必要性もあるのではないか。政府は、やたら特定の宗教ばかり想定して、宗教教育が学校でなされるべきだと主張するが、それならそれで、それに対抗して、キリスト教の側も、精一杯アピールしていくことができるに違いない。
 最先端の宇宙論は、もはや高等数学の方程式を解くことによってしか直に味わうことができないが、その例示的な意味は、こういった本で確認しておくとよい。私にとっても、たいへん魅力的な本だった。通り一遍の説明しかなされていない部分も少なくないが、最先端のこの学は、考える私たちに、また新たな地平を準備していくことになるかもしれない。




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