本

『小学生のうちから知っておきたい 著作権の基本』

ホンとの本

『小学生のうちから知っておきたい 著作権の基本』
宮武久佳
杉本龍一郎イラスト
カンゼン
\1600+
2024.7.

 小学生対象のようなタイトルと、表紙のイラストであるが、これは十分大人の利用に耐え得る内容であると思う。確かに「小学生のうちから知っておきたい」のであって、大人がこれで知ってはならない、とは書いていないのではあるが、このままだと、大人は見向きもしないだろう。もったいない。こんなに詳しく、分かりやすい「著作権」についての解説は、見たことがない。
 そう、実に詳しいのである。大まかな原則を投げかけて、理解したような気分にさせるというものではなく、逐一実例を挙げて、細々としたケースについて法的にどうなっているのか、手取り足取り教えてくれるという感じなのである。
 もちろん、小学生に理解できる点をメリットとしているから、自分の作文を少し替えて投稿しているのを見たらどう思うか、というような問いかけからまず始まる。そうして著作権というものの存在意義に気づかせた上で、では授業中に新聞をコピーしている先生はよいのかどうか、『ごんぎつね』に著作権はあるのか、といった、起こり得る疑問についてこれから本書が答えてゆくことを伝える。但し、特にこのオンライン技術の発展の中で、実は社会がまだ戸惑っているのだ、という実情も告げておく。こうした前提で、本編が始まるのである。
 何をしてよいか、よくないか、ということをただ教条的に語るだけでは、本書の役割は薄い。そもそも「権利」とは何か、「著作権」とは何か、そうしたことから説き始める。これは実のところ難しい問題なのだ。著作権が必要な理由や「著作者」とは何か、「著作物」とは何か、こうした根本的なところからきちんと説明するのは、簡単なことではないと思う。大人も、普通はなかなか説明できないだろう。他にも「知的財産権」「保護期間」といった基本的なことを、まず説明するところが、本書のしっかりしたところであるように感じる。また、コラム形式で、「著作権はどうやってできたのか」が知らされるが、私もそれについては知らなかった。どこかで聞いたことがあったかもしれないが、ウィクトル・ユゴーが政治家でもあったことから、ベルヌ条約という世界標準の著作権が始まった、というのである。また、その13年後には、日本でも著作権法が制定されている。それは、近代国家だと認められたいという明治期の日本の悲願に関係するものであったのだという。
 さて、著作権の中には、細々とした権利が想定されている。本書にはその一つひとつが丁寧に挙げられている。すべてはいま表示しないが、順に、「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」「複製権」「上演権、上映権、演奏権」「公衆送信権」……など、実に様々なケースに於いて著作権が守られるようにそれぞれ規定されていることが解説される。これは並の大人では全部知悉しているなどとは言えないであろう。
 また、学校に於いては、授業で使うことについては、特例措置があることが説明されている。が、廊下にキャラクターの絵を並べるなど、授業とは言えないものについては、通常社会と同様に、禁じられているのだという。この辺り、本当に細かい。
 そして最後の章では、本書の半分ほどを使って、より実践的に、一つひとつの実例を挙げながら、著作権侵害にあたるかどうかを検討してゆく。「人気キャラをマネして描いてマンガを発表したら」、何かよくないような気がしないでもないが、訴えられない限りは構わないのだという。コミケの二次創作もそうである。作者としては、利用されることが名が知れ機会にもなるため、訴えないことが多いのだそうだ。では「学校の放送でヒット曲を流す」のはどうか。公共施設一般について言えるのだが、商売にしないならば構わないのだそうだ。しかし、「新聞、雑誌の切り抜きのコピーを校内で掲示」するのはどうか。授業の過程で使うのはよいが、コピーを廊下にただ貼るのは駄目なのだ。新聞を直接切り抜いて貼るのはよいが、コピーがだめなのである。この辺り、もちろん学校の先生は知っているはずなのだが、一般には理解されていないような気がする。
 こうして挙げてゆけばきりがないので、ぜひ本書を開いて戴きたいと思うが、授業で作文を添削するということについても、微妙なケースが伴うというそうだから、私も作文自答を行う以上、無関心ではいられない問題があると思った。本や楽譜、デジタルコンテンツの扱いも、ケースにより扱いがずいぶんと違う。本のコピーはよいが、全部は駄目だとか、「歌ってみた」というネットの場合は、すでに動画投稿サイトが著作権料を支払っているので問題はないとか、教えられることが多い。替え歌はいけないのが基本だし、ゲーム実況は連絡しておくべきだし、朗読はコピーと同じでいけないというふうに、ありがちな様々なことが、本書には易しく説明されている。メール転送はいけないし、プロフに他人の顔などを使うこともいけない。フリー素材にも、してはいけないことがある。こうした点で、それは何か、とお思いの方がいたら、どうぞ本書から学んで戴きたい。私も気をつけねばならない。




Takapan
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