本

『学習権を支える図書館』

ホンとの本

『学習権を支える図書館』
種村エイ子
南方新社
\2520
2006.3

 図書館とは何か。図書館の使命は。図書館に起こる問題は。
 こういうことについての本は地味であり、一般書としてはなかなか出回らない。それが、図書館だからこそ率先して入ってきて、そうした問題を知ることができる。ありがたいものである。
 そもそもどうして図書館というものがあるのか、それはどういう権利や目的をもって運営されているのか。そんなことから掘り起こすと、書物がいくらあっても足りないかもしれない。図書館があるからこそ、私は本をあまり買わないでも生きていけることになる。逆に言えば、本屋さんは儲からないことになりかねない――だが、必ずしもそうではないのだ。読んだからこそ、買うこともある。さらにいろいろな本に触れようという気も起こる。販売拡大の一因にも、間違いなくなっている。それが、ぱっと見には、書店が損をしているように見えるわけだが……。
 さて、この本は、自らガンを患い、そのことを知ろうとすることで、図書館で「調べる」ことの大切さを痛感した著者が、司書としての仕事をこの学習権に向けてまとめあげる情熱に襲われた結果、生まれたものである。
 鹿児島での仕事の実績から九州各地の図書館の実態を綿密に調査し、調べたい、知りたい、という欲求にどのように答えていけばよいのかを、様々な角度から追っている。そこには、子どもたちの視点ももちろんのこと、弱者とされる立場の人々の視点を忘れることなく、いやある意味でつねにそこからのみ、「知る」権利を追求している姿勢は、感動すら覚える。
 詳しすぎるほどの資料やデータはさておき、私たちは図書館について、もっと真剣にそれを支える立場に立ちたいと願う。
 終わりのほうで、司書としてどうするかという問題も列挙されている。ハリーポッターの本で障害者差別の表現が見られたことで、教育委員会から、子どもに読ませないようにとの通達がきた。司書としてあなたはどうする?――そんな問題にも立ち入っている。佐世保の事件を受けて、バトル・ロワイヤルの本についても同様である。
 私たちは、思想の自由、言論とは何かといったところにまで、視点が及ぶことを感謝する。それは、十把一絡げにはできない、それでいて避けて通ることのできない、切実な問題が潜んでいる。私たちは、それから逃げることはできない。
 学習するということは、つねに闘いでもあるのだ。




Takapan
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