本

『時間のルール』

ホンとの本

『時間のルール』
高取しづか+NPO法人JAMネットワーク
合同出版
\1470
2008.7

 親として、子どもに教育をするためのシリーズ。「お片づけ」「お金」とある中で、この「時間」を手に取った。与えられた時間をどう使うか。それは自己実現のための要素でもあるが、社会生活のルールでもある。時間を守るということは、信頼される人間であることの第一ともいわれる。
 どうしたら身につくのか。
 自然と身についた、という幸運な大人も多いだろう。だが、子どもたちの中には、どうしてもルーズに見えて仕方がない子もいるし、なんと段取りの悪い、行き当たりばったりの毎日なのだろうと呆れる子もいる。実際、宿題を忘れる子はいつも忘れ、必ずしもそれが怠けているとは言えないこともある。自習をしている子どもたちを見ていても、実に要領の悪い子が多い。たんに能力とばかりは言えないような気がする。
 そう。時間の使い方が下手なのだ。
 時間の使い方を身につけされるのは、親としての大切な教育であるように思えてならない。だが、親はただこう言うばかりだ。「早くしなさい」
 幼児の親は、「はやく」という言葉を一番多く使うそうだ。それはよく分かる。ただ追いまくられて、親の顔色を見ながらなんとかそれをこなそうとするばかりの子どもの日常。これでは、自分で時間のマネジメントを考えることなどないし、自分の時間をつくりだしていくという感覚が身につくはずがない。けれども大切なのは、自分で自分を管理していく能力を育てることなのだ。
 この本は、そういう視点で、どうしたら時間の管理ができる一人の人になっていくのか、問いかけながら様々な日常の中でのアイディアを紹介していく。たしかにこれはプログラム化されたものではあるまい。これさえすればよい、というものではあるまい。なんとか自分でその感覚や技術を会得していくことが必要なのである。
 この本は、それこそ時間をうまく使えない人のように、だらだらとそのことを記述するようなことをしない。イラストを使うが、見開き2頁1項目というように、枠の中にはめることもしない。この姿勢が、時間管理の要点を伝えているように私には見えてならない。内容を捨てて形だけをとりつくればよいというものでもないし、メリハリなくだらだら流れていけばよいというわけでもない、という姿勢である。
 ひとつひとつ、与える刺激が違う。だから最後まで楽しく読める。こんなのもあるのか、こういう視点が大事なのだ、と驚きながら頁をめくる。この本の構成自体が、時間のルールのために配慮されているように見えてならないのだ。
 だから、信用できる。そして、よく考えてみれば、この時間のルールが自分のルールとなるならば、充実した人生を歩むことができるのではないか。あれこれと不満をもつばかりの人は、結局自分の中でこうした時間管理ができていないことが多い。時間の中で生きていくことしかできない人間は、何をするにしても、時間を使い、あるいは時間を考えながらしなければならないからだ。
 段取りがよければ、うまくゆくことも多い。うまくゆかないのは、段取りが悪いからだと思われることが多々ある。この段取り能力は、ひとつには数学的能力だとも言われる。たとえば料理である。湯を沸かしている間に材料を切っておく、炒めている間に調味料を準備しておくなど、料理のできあがりの時刻をイメージしながら、作業を進めていくというのは、数学的思考の能力だというのだ。それは、たんに科目としての算数や数学ができるできないということで区別されるものではない。この本は、数学的思考を体得していくための様々な知恵である、と私は思った。
 だから、「子どもが変わる「じぶんルール」の育て方」などというシリーズのタイトルにこだわらずに、大人もまた、やり直しのために読んでみるといいと思う。ただ、大人は子どもほどには、これまで築かれた自分を変えることは難しいだろうが、やり直せないとは思えない。
 私はこの本の提案は、実は人生の根本問題ではないかと密かに考えている。




Takapan
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