本

『地球診断』

ホンとの本

『地球診断』
太田弘・齊藤忠光編・著
講談社
\2940
2010.10.

 A4版の大きなサイズに、すべてカラー。見かけの割に価格が高いのはそういうところであろうか。だが、内容からしても、それだけの価値はあると言えるだろう。表紙にはやたらタイトルめいた言葉が並んでいる。「TVの隣に1冊!」の赤い斜め帯に始まり、題の上には「社会がわかる」「環境問題が見える」と置かれ、題の間にも「今、地上で何が起きているのか?」とくる。
 使用されているのは、人工衛星からの写真。世界各地の写真である。素人は、それを見ても、ふうんとかすごいとかで終わってしまう。しかし、プロの目は違う。この地形は、海水の汚染を示しているとか、かつての緑が激減しているとか、深刻な事実を指摘する。この本は、そのような指摘をしてくれる本である。
 だから、以前の写真と比較するようなこともあるし、人工衛星写真のみならず、地上におけるその場所の様子を写真で示すなどのこともある。地球における深刻な問題を、はっきりと見せるということは、ありそうでなかったことではないかと思う。たいていは、言葉で、○○の環境心配されています、というくらいで、聞き流してしまいそうになるものである。しかし、この本のように、目で見せられると、全く違った印象を受けてしまう。それは喩えは悪いかもしれないが、「ちょっと息苦しくて……」と感じるのと、肺ガンのX写真を見せられるのとの違いほどのショックである。まさに、地球は危機に瀕しているのである。
 この本は、その画像が何を伝えるのか、を的確に記している。まず「画像が教えてくれること」として、それが示される。それから、その背景や歴史、現状などが詳しく説明される。必要ならば、イラスト的な地図やグラフなどを用いて、その問題点がより伝わりやすいように工夫されている。実に良心的な編集である。とにかくこの本から、何が危機であり、それが迫っているということを、なんとかして伝えようという熱意が感じられる。
 ではどうしたらよいのか。時折、「ワンポイント」と題して、見落としがちな点が指摘されている。私はこの本で、ここが好きである。守るために今どんな努力がなされているのか。人間のせいというよりもそもそも地球自体の変動がどう影響しているのか。ずいぶんな過去にも環境保護がなされていたという資料。さらには、世界遺産に登録されたことで却って人がたくさん訪れるようになり環境が破壊されているという皮肉な事実など、単純に環境保護とは言えない点が鋭く指摘されている。この本は、このコラムによって、平面的な本で終わることから救われている。物事には、様々な側面があるものだ。事がこの地球という莫大な存在に関わるとなると、ちっぽけな人間の薄っぺらな理解だけで簡単に済むようなものではない。まさに、「TVの隣に1冊!」という具合だ。絶えず、あらゆる特集番組やニュース番組において、この本を参照して、深刻な事態に対して、より立体的な理解をしていくことが望ましい。
 そして私は思う。自分自身もこの環境を破壊することに加担しているという意識がなければ、この問題の解決はありえない、と。




Takapan
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