『知恵を生み出す世界の名言』

『知恵を生み出す世界の名言』
名言発掘研究会編
はまの出版
\1365
2005.3

　世界各地からの優れた短い名言を集めた本。右頁にその言葉を、左頁にそれについての解説を載せている。
　と、説明をすればこの程度で終わりだ。
　シリーズで何冊かある中で、偶々「知恵」に相応しい編を読んだことになる。生きる知恵や成功の知恵などの点から、味わい深い言葉がたくさん集められている。
　気軽に読める本ではある。たくさんの言葉に触れるのもいい。
　他方、左側の解説は、あまりよい解説とは言えないものが多いようにも見えた。ただの一個人の感想としてなら優れているが、解説としては、すべてを信用するのもどうかと思えるのだ。
　名言を残した人についての紹介の部分は、いいと思う。比較的客観的な部類の事柄は、大いに紹介してよいし、その言葉を理解するための助けとなる。
　しかし、その言葉の意味の解釈を、感ずるままに「〜ではないか」式にまとめあげるのは、はたして当の本人はそういう意味でその言葉を記したのかどうか、疑わしいケースもあることだろう。
　それというのも、聖書の言葉が幾つか引いてあったのだが、およそ聖書の意味からはかけ離れた、ありふれた生活の知恵レベルで捉えきっており、それを、無宗教の我々日本人としてはそういう解釈もいいだろう、というふうに割り切って述べてあったからである。
　こうした、原意を無視する姿勢が明らかにされると、他の名言も、原意を汲み取っているのかどうか、たいそう疑わしくなる。
　気軽に読むためのものを、このように厳密に指摘するのもどうかと思うが、「研究会」みたいな名を冠して権威づけることなく、個人的なイメージ解釈だというふうにしてあれば、それはそれで良かったと思うと、やはり残念である。