本

『サムネイルデザインのきほん』

ホンとの本

『サムネイルデザインのきほん』
滝上園絵
ホビージャパン
\2000+
2023.3.

 この手のデザインの本は、時代により変わる。本書は、2023年仕様である。YouTubeからTikTok、Instagram、Facebookといったメンバーは、何もこの年だけではないけれども、そこで推奨されるサムネイルのサイズがまず紹介される。また、使われるバナーも縦長や横長その他様々ある。それらの標準的なサイズを基に、終わりのほうでは見本が並べられる。見応えのある見事な見本である。
 サムネイルの定義とその意義から、デザインのおおまかな心得が最初に紹介される。このコンセプトはとてもよいと思う。「写真画像をぼかす」や「角度をづけるアレンジをする」など、本文中で詳しく展開させるアイディアの一部を出している。が、もちろん本文には実に多くの知恵と実例が並んでゆくことになる。見開きでひとつのアイディアが示される。よくない例と、どうすればよいかについての簡単な説明が施される。こうした説明は簡単なほうがよい。くどくど述べず、ポイントを押さえるだけで、あとは実物を示す。それでいい。それで納得できないような読者は、デザインの素養はない。一つひとつ、吠えて喜んでいけばよい。
 これらは、実際に作品として使われたのであろうか。いかにも実際のものであるかのようではあるが、もしかすると、全部本書のために例として作成したものなのであろうか。だとすると、この著者たるデザイナーには、どれほどの才能があるのだろうか。否、才能というよりも、誠意である。
 これだけのものを見せると、読者にとっては、どんなにありがたいことだろう。私も、図書館で借りたこの本を、手元に置きたいと思った。
 実は、本書そのものが、その作品であるということには、最初の最初には気づかなかった。何がそうなのか。それは、目次である。こんな目次は初めてである。
 ネタばらしになるかもしれないが、成り行き上触れることにする。それは、目次にその見本たる「サムネイル」たる作品が、正に小さなサムネイルとして縦に並んでいるのである。その横に、意識すべきコツのようなものが文字で書いてある。さらに、それはデザインの用語で言えばどういう概念であるのかも掲げてある。そして、頁。つまり、目次だけ眺めれば、何をどうすればよいサムネイルになるのか、が見事に見渡せるのである。
 SNSであれウェブサイトであれ、アイキャッチとしての写真や画像を掲げることはある。ツイッターにしてもそうである。多くの人に、使うチャンスは多々あることだろう。これらのデザインの基礎を知るだけでも、ずいぶん変わってくるだろう。無知であるとき、自分では良い作品のように思えても、しょせん独り善がりなのである。
 とはいえ、私のような素人は、これらのアドバイスも、猫に小判のようなものであって、プロが手がけるものからすれば、子どもの落書きのようなものに過ぎないと思われる。少々こうしたデザインの本を見たところで、腕が上がるものではないと思わなければなるまい。それでも、無知よりはましである。そして後は場数を踏んで、感覚を磨いて逝くのである。
 また、このような学びをすれば、世の中の良いデザインを見る眼差しが違ってくる。良いものが目に留まり、それのどこが良いのかを「言葉」で説明しようとするだろう。それが大事なのだ。「言葉」にすることが、感覚を磨く。ただなんとなく色や形を置いて居るのではない。しかしまた、「言葉」にさえすれば終わりなのではない。その「言葉」を「現実」にするために、人間は模索し、時間を要して改善してゆくのだろう。本書は、そのほんのスタートに過ぎない。
 巻末に、フォントや画像、またデザインについての推薦図書が紹介されている。ひどく詳しいということはないが、ひとつの入口となっていると思う。そして、本書が、入口としては、かなり贅沢な、便利なものになっていることは確かだ、と私は感じる。




Takapan
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