本

『The End of the World』

ホンとの本

『The End of the World』
那須正幹(なす・まさもと)
ポプラ社
\1,200
2003.4

『六年目のクラス会』(1984)から4編が選んで編集された本。少年少女の心を描いた、きらめく小説が集められている。
『約束』に引き込まれた。
 めぐみ幼稚園ふじ組のクラス会が行われた。六年後にクラス会をしよう、と約束していたというのだ。集まった13人が、幼稚園の時のことを思い出しながら語らううちに、ノリくんのことが口に上った。ノリくんこと鈴木則男は、おもらしをよくするので、皆に嫌われていた。ところが、彼は死んでしまった。話題が、そのことに向かっていく。その子の葬式のときに、そのおじいさんが自分たちを怖い目で睨んでいたこと、水遊びのときにその子のパンツを脱がして水をかけたこと、そしてその子は心臓が悪く、その次の日から幼稚園に来なくなって、やがて死んだこと……。子どもたちは、誰のせいだという話をし始める。責任を追及されたお姫様タイプの女の子は、先生も同罪だと笑う。
 小品は、6つの小さな章からできているが、「なんとなく」最初から違和感があった。この小説は、誰が語っているのだ? と。それはたしかに、2章の終わりと3章の終わりに、仕掛けられていた。ここではそれを明言しないが、最後までくると、なるほど、と納得する。
 子どものころのほろ苦い体験は、最後に収められた『ガラスのライオン』にも美しく綴られる。子どもはけっして純粋無垢ではないし、単純素朴であるわけでもない。
 社長さんの子どもの恒男ちゃんが引っ越してきて、ぼくとタッくんとはすぐに友だちになった。ピアノを弾いたり天体望遠鏡を見せたり、なんだか別の世界の友だちという感じ。恒男ちゃんはやがて、宝ものを秘密の場所に隠す計画を話し、それぞれ家から宝ものと呼ぶにふさわしいものを探してもってくる。ぼくは、父さんのガラスの文鎮がいいと思った。青いライオンのガラス細工だった。タッくんのビー玉、恒男ちゃんのコインとともにそれらを箱に入れ、三人は大川へ向かった。ヤナギが三本植わった中州にその宝の箱を埋めると、宝の地図も作成した。それを3つに裂き、それぞれが保管する。いつか埋めた場所を忘れたとき、この地図をつなぎ合わせて、宝の箱を掘り出すのだ――。
 夏休み、恒男ちゃんはいなかに帰り、留守だった。その最中、ぼくたちの町に台風がきた。ぼくとタッくんは、中州へ急ぐ。宝の箱がどうなったか心配で、ついに二人だけで埋めた場所を掘る。だが、宝の箱はなかった……。
 そして三十年後、この物語は一つの結末を迎えることになる。
 この本の帯には、高校生にして芥川賞候補に挙がった島本理生さんの推薦の言葉がついている。「きっとあなたは十年後もおぼえている。そんな物語です。」




Takapan
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