本

『テツガクうさぎに気をつけろ』

ホンとの本

『テツガクうさぎに気をつけろ』
きむらゆういち作・山下ケンジ絵
講談社
\1050
2007.1

 何気なくこの本を借りて楽しみにしていたら、テレビで「あらしのよるに」という映画が放送されていた。我が家の幼児が、ちょっとコワいなどと言いながらも、強く心に残った様子であった。その映画の原作の絵本をつくった人であるということに、しばらく気づいていなかった。このテツガクうさぎの話は、絵は別の人だが、まさにその作者によるお話なのである。
 もとより、子どもが読んで分かる部分は少ないだろう。大人向けではあると思うが、子どもだって、オオカミと一緒に、「ケイジジョウガク」や「ジツゾンハホンシツニサキダツ」などと唱えてみると楽しいかもしれない。子どもは、そういうのが好きだ。意味なんか、分からなくても楽しいのだ。
 うさぎを見つけて食べようとした、おおかみのゴンノスケは、うさぎに、哲学を知らないおおかみなんかに食べられたくない、と言われてショックを受ける。ゴンノスケはそのことが気になり、ついに哲学を学びに行く。難しいレクチャーを受けたゴンノスケは、意味はさっぱり分からないが、哲学用語だけは口に出せるようになる。ゴンノスケは、再びあのうさぎに出会った。うさぎは、もう哲学になど興味はないという。ころころふりまわされるおおかみはやっぱり愚かだ、みたいなことを言って去っていく。ゴンノスケは、とてつもなくおちこむ。そして、自分は何のために生きているのか、と考え始める。あとは、ちょっとしたオチとなる。
 大人のための寓話でもあるだろう。
 そして、ものをあまりにも考えていない私たちに、自分の姿を気づかせようとしているように、読むこともできるだろう。
 さて、あなたはどうだろう。




Takapan
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