本

『読んで見て楽しむ 都道府県地図帳』

ホンとの本

『読んで見て楽しむ 都道府県地図帳』
学研
\1200
2010.5.

 都道府県別の地図があり、そこにはイラストを交え、小学生にも分かりやすい図版となっている。
 それから、つねに日本地図を意識した形で、都道府県別の生産額や順位などが、様々な分野で表示されるページが後半に並んでいる。世界的な貿易の姿も一目で分かるように、また詳しく見れば詳しく調べられるように、掲載されている。
 地図は、通常の地図の上に重ねて、名産がアイコン的イラストで散らされていて、たいへん見易い。また、地図を読む学習にもなる。
 これが最も直接的に役立つのは、小学五年生だろう。だから小学五年生になるお子さんをお持ちの家庭には、ぜひ、とお勧めする。社会科についての学習はこれで十分である。後は、この資料からどういうことを考えればよいのか、それぞれの人が考えればよい。もしそれを考えるのが面倒であるならば、国勢図会やその他の社会科資料集が添えられてもよい。とにかく、この本はいい。
 私がこの本を図書館で借りている、その最中に、東北関東大震災が発生した。
 私は直ちに本を開いた。宮城県、岩手県、福島県、それぞれの頁を開いたら、被災地がどこにありどのような地形で、近くに何があるか、どの程度津波が影響しそうか、交通網はどうなのか、一目で分かった。何がダメージを受けたかまで、想像することが十分可能であった。とにかく、ただニュースで聞くだけではなく、現地の感覚が、いくらかでもよく理解されるような気がした。
 さらに、漁獲高の資料を見ると、水揚げ量を見て愕然とした。水揚げ量は、実は毎年ころころ動く。受験の社会科でも、毎年資料を見ないと順位が動いているので面倒なところである。この本でも、2007年のデータなのでその後この通りであるかどうかは保証はない。だが、おおまかに大変動があるわけではない。この年、漁港別では、八戸が3位、石巻が5位、気仙沼が8位、女川が10位となっている。さばについては石巻と八戸が2位と3位、するめいかではこれらが1位と2位を占めている。
 八戸は再び動き始めたというが、どこまで元に戻れるか分からないし、その他は殆ど壊滅である。漁船そのものがもう存在しない。東日本にとっても大きいが、日本全体にも当然影響があるはずだ。かきの生産では宮城県が2位である。さんまは、1位の北海道に続いて、宮城・福島・岩手と並ぶ。これは痛い。現地の人の生活ももちろんであるが、全国的にもきついものがある。
 小学生向けの資料集から、ここまで痛みを感じるのである。一冊あるだけで、子どもも大人も、理解が深まる。さらなる資料は、その後で考えたらいい。震災の傷を思うと、いまはタイトルにあるように「楽しむ」ことはできないが、東北方面の方々のためにも、いくらかでも理解をしていきたいと思う。




Takapan
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