本

『多数決とジャンケン』

ホンとの本

『多数決とジャンケン』
加藤良平
講談社
\1260
2006.8

 振り仮名が付いているので、小学校上級生でも読めるだろう。
 数式などを使わず、言葉で、あるいは津川シンスケ氏のたいへん分かりやすいイラストで、十分にエッセンスは伝えられていると思う。
 最初は、多数決と選挙に関する説明で、あらゆる権謀術数の仕組みが解かれていて、これは高度だと思った。だが、使われている例が、たしかに小学生で十分理解できる内容なのである。
 常々私は言っている。難しいことを簡単な言葉で説明することができる人は、頭のいい人だ、と。難しい言葉を使わなければ説明できないのは、その人自身が実はよく分かっていないからなのだ。その意味で、この著者は実に頭がいい。
 多数決による決定に、これほどごまかしが可能だということが、どれほど知れ渡っているだろうか。その内容は、本書を見てのお楽しみとしたい。とくに、実例が最先端の芸能情報を使っているところなど、しゃれていることこの上ない。
 その後、ジャンケン、コイン、くじ引きと話が続く。ようやく、これは民主主義の説明ではなく、数理科学の理論の説明であることが分かってくる。しかし、中学で習う確率という単純に数学的な処理だけでなく、その処理のもつ意味までが面白いように分かる点が、優れている。つまり、実際にどんなインチキができるか、などをこれほど細かく丁寧に記した本は、ほかにないのではないか、ということだ。
 これもまた、常々私が言うことだが、優れた児童書は、子どもだけに限定するのはもったいない。大人も、こんな楽しい本は、読むべきだ。比較的短い時間で読めるのだから、この楽しみを子どもだけのものにはしないでおこう。




Takapan
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