本

『人びとを楽しませる仕事』

ホンとの本

『人びとを楽しませる仕事』
吉本興業・日本奇術協会・木下サーカス
ほるぷ出版
\2,200
2003.3

「知りたい!なりたい!職業ガイド」というから、ティーンエイジャー向けに、分かりやすい就職案内だろうというつもりで開いた。そうだと言える面ももちろんあるが、大いに驚いた。これは人生の教科書のようなものではないか。
 漫才師では、大助・花子さんの身の上が語られる。中学生あたりを意識して編集されているので、インタビューの内容や形もそのようにできている。大助さんは頭のいい人だろうとは思っていたが、こんなにも秀才だったのか、と思わされた。そして、真面目一途というか、命懸けで一つの芸に情熱を傾けてきたということが、よく伝わってきた。  そのように、よい先輩の意見も記されている。と同時に、「マンガ」とタイトルに小さく入っているように、マンガのストーリーがちらほらと間を埋めて、小気味よいテンポで本は進んでいく。
 マジシャンについても同様で、サーカスについてもわくわく楽しく読ませてもらった。芸の身につけ方のコツのようなものにも触れられているし、第一、将来どういうコースを取ればその道に進めるかという、具体的なアドバイスが優れている。
 少年少女たちに向けて作られている本であることは、誰が見ても分かる。だが、おとなはこれをバカにすることはできない。このような本の中に、人生の真実があると言うことができるかもしれない。なるほど、と分かりやすい説明は、むしろ大人が喜んで味わうべきものなのだ。流すように読めてしかも、内容が一読で分かる。読書の一部はこのようでありたい。たしかに、錯綜した裏の世界が記されているわけではない。子ども向けに、夢いっぱいに膨らんだ心に語りかけるように、最後まで書かれている。だが、こんな素朴な、夢の実現へ向けての歩みこそが、大切なものだと断言してもよいような気がする。
 芸はともかく、仕事や人生に対する夢や希望といったものが、この温かな編集姿勢のこちらに見えてきて仕方がない。これは人生の教科書であるに違いない。




Takapan
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