本

『毎日が楽しくなる子育てのルール』

ホンとの本

『毎日が楽しくなる子育てのルール』
佐藤るり子
エクスナレッジ
\1470
2005.6

 タイトルと中身とは、印象が違った。
 たしかに、表紙の片隅に、こういう文字が見える。――子どもの「やる気」と「考える力」を伸ばそう!
 つまり、これがすべてであった。幼児教育、教育、教育という一面に終始する本であって、「子育てのルール」というタイトルには期待はずれであった。しかも、「毎日が楽しくなる」というのは、どういうことだろうかと首を捻る。子どもが知的に進んだことができるようになると、親は楽しくなる、という意味なのだろうか。
 いや、そういう種類の本があってはならない、などと言うつもりは毛頭ない。あってしかるべきだ。だが、タイトルから選んだ人をがっかりさせるような仕方はどうか、というつもりで言っている。
 いや、もしも知的――これはもちろん幼児のその年齢における発達という意味でのすべての行動を含む――能力に限った子育てこそが、子育てのすべてである、と著者が考えているのであれば、この本のタイトルは本気なのだろう。
 私はそうは考えない。
 親が決めた通りに子どもは知能が発達する、という考えを、私はとらない。私は、子育てをしながら、親こそが育てられていくというふうに捉えている。この本には、このように親が変化するという視点が、全くない。親は何も変わらずに、子どもだけを改造していくにはどうすればよいか、という本なのである。
 それこそが親の楽しさである、という意味のタイトルなら、私はこうした本を推薦することはしない。
 幼稚園教諭を経験し、幼児教育を長年なさったという著者であるが、はたして、ご自分のお子さんをどのように育てたのであろうか。その記述が全くどこにも見られなかった。もしもであるが、著者自身が「子育て」をしたことがないにも拘わらず、知能育成の教育こそが子育てであると思い込んでいるとでもしたら、本当の「子育て」に奮闘している世のお母さんたちが、このような本に振り回されることのないように、と願うばかりである。




Takapan
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