本

『体育の教科書』

ホンとの本

『体育の教科書』
NPO法人CSP編著
新星出版社
\1575
2010.4.

 サブタイトルがうるさいほどついているが、大きなものは「小学生のよくあるつまずきと苦手がたちまちなくなる136の方法」ときた。学力アップシリーズの一つである。
 近年、体育の家庭教師が一部で人気があるそうだが、勉強と違い、運動や体育については、なかなかごまかしというか、付け焼き刃が効かないものである。しかも、そうした教師に出会えるチャンスや費用をもつ家庭は、ごく限られたものではないかと思われる。
 そこで登場したのが、この教科書。教科書であるから、これに従えば、一定の効果が期待できるはずである。そして、それが期待できそうだから、なかなかのものである。
 ちょっとうるさい表紙はともかく、中に入ると豊富な写真とイラストで、目で見て教えるポイントが分かるようになっている。どこが悪いのか、どこを改善すればできるようになるのか、これが、体育教師の魔法の言葉であるのだが、やはりそういうところを的確に指摘できるかどうかが、この手の本の成功を決める大きなポイントとなるであろう。
 そもそも、相手は小学生である。どのようにやる気を起こさせるかは重要である。もとより素直に指摘を受け容れやすい小学生ではある。ただし、それは自覚の上での納得でなく、親に支配された精神状態の中での素直さである。それが近年、子どもを奔放にさせてきたツケがきて、一方でいざというときに親の言うことを聞かない子が現れ、他方では親が力ずくで子どもを支配しようとする背景による虐待が起こっている。それはともかく、子どもにやる気が出てくるための方策もまた、この本にはふんだんに載せられている。ただ効果を狙ってああしろこうしろではないのだ。
 その意味では、体育に限らず、あらゆる学習について大切なことに触れられているとも言えるだろう。どうぞ親や指導者たる立場の人々が、味わってみて戴きたい。もちろん、この本の言うことがすべてであるとは限らない。だが、自分の教え方や接し方を振り返る機会となるのではないだろうか。
 体を動かす、という体育の基本から、実にやりやすいもので取り組むようにまず促される。基本的な動作や運動のもつ意味と、それをどうすれば効果的にできるようになるのか、たくさんの知恵がここにある。新聞紙を丸めることで握力が増すなど、素人が気づくことはないであろう。ソフトボール投げなど、どんどん力が落ちている項目の一つであるが、空手チョップの「イメージ」をもってやろう、などと楽しいイメージも沢山紹介されている。
 球技というのは、また独特のボール扱いやチームプレイという課題がある。得点できるかどうかなどには、偶然の要素も加わる。だが、体力測定項目や陸上、そして水泳というのは、その本人の能力がまともに現れるものである。これはまさに当人がどういうイメージでこなしていくか、あるいはどういう要領で取り組んだか、ということにかかっている。たんに筋肉がつけばいいなどというものではない。この本は、これらについての指導のノウハウが満載である。体育教師も、ここにあることをすべて実施するのは難しいのではないだろうか、と素人ながらに思ってしまう。
 それがこの価格である。安い買い物ではないだろうか。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります