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『絵でわかる 台風のメカニズム』

ホンとの本

『絵でわかる 台風のメカニズム』
宮本佳明
講談社
\2600+
2025.5.

 ここには「台風のメカニズム」は書いてある。だが、それが果たして「絵でわかる」かどうか、それは私には遠かった。
 実に専門的なのである。これでもか、というほどに、台風についての細かな知識が次々と現れる。
 まず「大気」と「水蒸気量」。この辺りはまだついていけた。その大気の温度、つまり気温についても、まだ読めないことはない。空気塊の動きから、渦の話になると、少し怪しくなってくる。「コリオリの力」、そういえば昔習ったっけ。一応図解がある。確かにある。それが「絵」ということなのだろうとは思う。しかし、理論はきっと専門的だ。
 要するに、「わかる」というのは、物理の方程式を表に出してこない、というだけのことなのだということが、後からはっきりするのだ。方程式から導き出されたデータを、グラフでどーんと見せるくらいのことは当たり前であるが、素人にはそれも解読できるものではない。いや、私が単に無知であるためではあるのだろう。しかし用語ひとつとっても、ハードルが高かった。
 そしてそこからが、台風の話にやっと入ることになる。角運動量や渦度となると、方程式もわずかだが顔を出す。それはもう追いかけないことにした。
 台風の構造や発生についても、「詳しい」というレベルではない。式計算をしないだけで、示されていることは、本格的な学術的内容なのだ。私とくれば、中学生に教えるくらいの知識しか持ち合わせていない。ただ、それだけでも、ある程度書いてあることは読めることがあるから、やはり中学レベルとはいえ、学んで理解しておくことは大切だ。それだけは間違いない。
 台風の目の構造も非常に詳しいし、台風発生のメカニズムについても、知的満足を与えるだけのものは、この一冊で十分説明されていると思う。勢力を増す力のひとつに、水蒸気の凝結に伴って出てくる潜熱というものがあることは、理科では教えられないが、確かにそうだと肯くくらいのことは、私にもできた。
 一つひとつの事柄について、確かに図がふんだんに使われている。データ資料とも言えるが、実際の台風についてとったデータが示されるのは、ただの教育的な本というものではなく、現実の台風情報について伝えようとする思いを伝えてくれる。と思いきや、極めて卑近な喩えを絵で示して、理屈を説明しようとする配慮も随所にあるから、ゆっくり味わえば、かなり専門的なことも呑み込めるようにできているのではないか、とも思われる。
 移動コースについてのメカニズムの説明もきちんとなされていて、一般の天気予報の解説には留まらない、深い理解が得られるのはもちろんである。が、本書が読者に強く考えさせたいことは、もしかすると、たんにそのメカニズムだけではないのではないか、という気もする。それは、終わりの方にある、「地球温暖化と台風」という章である。データがはっきり示す温暖化の事実は、こうして突きつけられると、本当に深刻だと思えてくる。確かに今後、台風は強くなる。その警告は、必ずしも杞憂なのではない。これだけ情報を重ねて示してきたことが、温暖化の事実と共に、益々災害の酷さへと結論走るようになる。それは、台風というだけの事柄ではない。豪雨の頻度が増加しているのも確かなのだ。
 もちろん、台風のメカニズムは、何もかも判明しているわけではない。流体については特に、私たちは知り尽くしているわけではないのだ。それでも、いまここまで分かっている、ということを、入門書レベルでここまで明らかにしている本書は、その説明の良さとカラーの資料の多さと共に、確かに存在意義を有しているはずである。




Takapan
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