本

『図説 太平洋戦争』

ホンとの本

『図説 太平洋戦争』
池田清編
太平洋戦争研究会著
河出書房新社
\1680
2005.4

 増補改訂版である。三百点以上の貴重な写真を効果的に配した、コンパクトな資料集と言えるだろう。
 編者の池田清さんは、レイテ沖で撃沈された船から救出され、海軍の特攻隊として出撃するところで終戦を迎えたという。
 戦争に関する記録は、その立場によって大きく印象が変わる。何らかの意見や主義などが先立つ場合、その考えに合わせた記述になってゆく。この本にもそれがあるかもしれない。だが、そうとは思わせないほどに、資料としての説明への努力が実っているように見受けられる。
 そんな、体裁のことはどうでもいい。戦後60年を数え、戦争を直接知らない世代が増えてしまった。そのような者が、かつての出来事をあるとかないとか騒いでも不毛な議論になりかねない。それがまた、国際的な諍いの元にもなってしまう。
 的確な記録が一方では欲しい。公的にも、私的にも。
 それから、それとは別に、体験的に生まれてくる教訓や将来のための知恵が、欲しい。
 戦争は、勝った官軍の立場がすべて正しいものとして伝えられがちである。また、負けた側の歴史観や思想上の特質によっては、同じ轍を踏むような未来を築く可能性もある。
 膨大な現実が織りなす結果としての出来事は、必ずしもその原因をつきとめたり責任の所在を明らかにしたりすることのできないものであろう。だが、その責任を、現在生きる私たちが引き受けるということによって、初めて意義ある時を刻み始めることができるかもしれない。
 私は、そう思う。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります