本

『食べる日本語』

ホンとの本

『食べる日本語』
早川文代
毎日新聞社
\999
2006.3

 レンジでチンする、という言葉がある。だが、今の電子レンジには、「チン」と音が鳴るものを探すほうが難しい。たしかに、昔チンと音がしたことはある。そのときに作られた言葉であろう。
 それは「筆箱」のごとく、筆を入れなくなってもそのまま流通している言葉なのだろうか。電話の「ダイヤル」は、「回す」とはさすがに使われなくなってきたものの、「ダイヤルしてください」はまだ聞く言葉である。
 レンジでチンという言葉についての素朴な疑問に、本の中で初めて解いてくれたのが、この本である。今、レンジが「ピー」という音を立てるからといって、「ピーする」とは言わない。それは、「ピー」というのが警告音であるからだという。食べ物は、「心躍るような鐘の響きが似合う」という。
 合点がゆくというのは、こういうことを言うのかもしれない。
 日経夕刊に連載されたコラムを編集した本。まだお若い方のようだが、食に関するこだわりや広い見聞には驚く。尤も、『美味しんぼ』などの漫画などからの資料を用いられるところなどは、若さゆえのことか、とは思われた。
 日本語には、オノマトペが多いというが、料理の世界でもそれは言えている。味わいを表現するのに、古来日本人は、様々な言葉を生み出してきた。何を食べても「おいしい」としか言えないような素人リポーターとは訳が違うのだ。
「ほっこり」「野趣」「クリスピー」「キレ」「きつね色」など、多岐にわたる表現の追究は、読んでいるだけでよだれが垂れてきそうなほどである。言葉への関心は、たくさんもつがいいだろうが、食べ物に関するとなると、これはまた格別である。ただ、「まったり」は見られなかったっけ。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります