本

『昭和レトロ博物館』

ホンとの本

『昭和レトロ博物館』
町田忍
角川書店
\1575
2006.9

 昭和を回顧する本は、珍しくなくなった。
 消えゆく歴史を懐かしむというばかりでなく、その時代にあった良いものを再発見しよう、という試みにも見える。
 昭和を知る世代が、今何か遺さなければ、という気持ちになっているというのもある。私もまた、そうした世代だ。
 若者は、むしろ昭和の世代を新鮮に感じることがある。そうした映画やメディアへの反応からも窺える。それは、ただ珍しさ故のことではない、何かを含んでいるように感じられる。
 もちろん、それを理想化してはならない。昭和がただ良かった、などと思うのも行き過ぎである。
 著者も、その思いである。ただ、恵まれたこの著者は、ものすごい収集をもっており、グリコのおまけから、ビン缶、空き箱の類まで、実物を目の前に並べることができる。その実証性は、かけがえのない資料として目の前に、過去を再現させてくれる。
 こういう本は、その切り口に好みが分かれよう。私はこの著者に共感した。少なくとも、淡々と事実を丁寧に語ってくれる点。由来や歴史について、細かく調べてレポートしてくれている点。また、カトリック教会に通っていたことに触れられていた点も、私が著者を信用できた理由の一つである。
 換算法は明確にしていないが、当時の価格から、今の物価にしてどのくらいと考えられるか、ひとつひとつ触れられている点も、親切である。
 あったあった、と夢中で読み終わった後にも、何か大切なものを振り返らせてもらったような気になる。類書の中でも、たいへん良い本の一つではないかと考えている。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります