本

『食卓の向こう側 キャンパス編』

ホンとの本

『食卓の向こう側 キャンパス編』
西日本新聞ブックレット
\499
2006.2

 新聞紙上で時折取り上げられた特集が、一定期間の連載を経てまとめられて出版されることがある。読者に好評で、またそれが世に問う内容である場合である。
 西日本新聞社もまた、この取材を通しての問題提起が、大きな意味をもつという理解で出版した。それがしばらく続いた後、その抜粋つまりダイジェストとして、今回ひとつの小冊子が作られた。全部読むのは苦しいという方や、全体を早く見通したいという方は、この一冊でまずは十分であろう。
 開くと、ある女子大生の一週間の食事の記録から始まる。ここで、多かれ少なかれショックを受ける。これはきっと極端な例だ、と思い込もうとする心理が働く。それもそうだろう。だが、必ずしも稀な例ではないということも、うっすら感じることができる。たぶん、私の経験からすれば、稀ではない。そのインスタントや出来合いのゆえばかりではない。朝食が殆どない。まるで、私が腹をこわして苦しんでいるときの量くらいしか食べていないようにも見える。
 よくこれで生きているものだ。少なくとも、骨など見えないところに影響がずっしり出てくるものだろうと思う。
 保育園の食事や、世の惣菜商法の中にあるもの、スポーツドリンクの中の砂糖に至るまで、食に関して私たちがあまりにも日常的として平然と見過ごしているようなものに、一時的に焦点を落として、問いかける。
 とりたてて専門的にデータをとりまくるのが目的ではない。待てよ、という見方を提供するのだ。それが、新聞の役目である。私たち読者が、自らに問いかけていくきっかけを作ることが肝要である。だが、それだけでは足りまい。子どもたちへの危機感は、私たちの未来、希望のための重要事項である。
 それにしても、大学生協が始めた「ミールカード」なるもの、これは魅力である。
 とはいえ、もし私のころにこの「ミールカード」があったら、私は自炊を覚えていただろうか、という気が、しないでもない。「生きる力」を、私自身で身につけた点を自覚しているけれども、それさえ保留してかくまうのでなければ、もはや生きること自体が続かないほど、食生活というものは、たいへんなハザードを点滅させているのであろうか。




Takapan
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