本

『食卓の向こう側5〜脳、そして心〜』

ホンとの本

『食卓の向こう側5〜脳、そして心〜』
西日本新聞ブックレット
\499
2005.7

 西日本新聞でこれまで何度か連載されてきたコラムのシリーズが、反響が大きかったこともあり、ブックレットとして出版されている。これはその第5弾。
 食ということは、政治的にも一つのキーワードとして取り上げられている。しかし、どうしても経済という背景からしか取り上げない政治屋さんたちとは違い、庶民は、まさにその食から悪影響すら受けてしまう当事者そのものである。
 とくに、子どもたちの食生活がおかしくなってきているということは盛んに発言されるようになった。親たちもまた、それに気づいている。が、気づいていない面も多いことだろう。すでに親自身がおかしいということに。
 新聞社は、そのような気づきを与えることを使命としている。警告を鳴らすのだという前書きはよく分かる。だがまた、そこで編集者自ら断っているにも拘わらず、不安をあおり立てることになってしまうのも事実だ。
 生まれ育つ子どもたちにダイオキシンが溜まっていくぞ、という記事は、女性にどれほどの不安を与えるものであるか、多分記者たちは軽く見ているのではないかと思う。この企画と執筆を進めた編集委員の中に、女性が何人いたのか、明記されていないが、ほとんどいないのではないだろうか。多分にこうした指摘は、「おまえは生きている価値がないのだ」と告げるに等しい重みをもって、女性にふりかかるほどの力をもっていると私は男の一人として想像する。
 新聞記者も私と同様、「これだ」と思うと、情熱で記事にするようなこともあるだろう。その結果、専門家やその問題に詳しい人々から、「違う」という反応を受けることもあるかもしれない。
 にも関わらず、声にならない声を拾い上げていくその仕事の意味は大きい。と同時に、それが希望なり不安なり、いくらでも人の心を動かしていく力として働くこともまた、事実なのだ。新聞という巨大なメディアは。
 新聞の連載には、多くの意見が寄せられた。このブックレットは、その反響の一部が後半に掲載されている。新聞記事が、たんなる思いこみや偏見であることから逃れるためにも、こうした試みは大きい。できるなら、本紙のほうで、反響を的確に伝えていくことも、為していってほしいと願う次第である。




Takapan
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