本

『素敵な空が見えるよ、明日もきっと』

ホンとの本

『素敵な空が見えるよ、明日もきっと』
リト@葉っぱ切り絵
講談社
\1600+
2022.8.

 近年見た本の中で、最もやさしいと思った。
 ツイートでも見かけることがあったので、密かに感動していた。この技はなんだ、と驚嘆の眼差しであった。
 それが本になった。こんなにもたくさんの作品があったのかと、これまた驚く。改めてツイートを見ると、本にないものが日々紹介されているではないか。
 ツイートには、短いタイトルのようなものがついているだけである。それが本書では、そのタイトルの下に、ショートストーリーがついている。ひとつだけご紹介する。
 
 タイトル「無理に背伸びしなくていいんだよ」#みんながついてる
 つらかったね。
 なかなか結果が出ないときほど、かえって気持ちばかりあせっちゃうんだよね。
 涙が出るのは、はずかしいことなんかじゃない。
 それだけ君が、がんばった証拠なんだ。
 自分のペースを見失ったときは、無理せずみんなをたよってみて。
 
 こんな感じで、すべての葉っぱ切り絵に、ストーリーができている。この葉っぱは、涙を流すネズミくんが、アルパカかしら、その胸のところに片手を置いている。後ろから木も、ネズミくんを心配している。葉っぱの下半分は比較的葉の原型を留めており、作者がそれをつまんでいる。背景は、家の近くの公園などらしいが、木々と青空が広がっている。
 いい。感性の問題なのかもしれないが、すべてが、いい。
 妻はこれを「癒やされる」と一目見て言った。図書館から借りていたのだが、これを注文して、母親に贈りたいと即座に言った。私もすぐに動いた。
 既に、2021年に『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』という類書を発行しているが、その紹介の部分だけを見るに、今回は技術的にもさらに細かく、レベルが上がっているようにも見える。創作の背景などについても、今回の本には少し紹介されているが、前作のほうには、具体的に制作の事情も説明されているらしい。こちらも見たくなる。
 サブタイトルに「小さな優しい 森の仲間たち」という文字も見える。ジャンルとしては、「葉っぱ切り絵絵本」である。なにもかもが、やさしい。
 すでに公表されているから明かしてもよいかと思うが、ADHDのために、これだけの集中力があるということらしい。ツイートは人々の感動を呼び、欧米やアジア諸国のメディアでも取り上げられているそうだ。障害はひとつの弱みだが、なんらかの形でそれが強みになることがあるのだと思う。作品も見事であるが、これを平和のメッセージとして、健常者と思っている人々が、教えられなければならないのではないか。つまり、平和については、この作者こそが健常者なのである。私は、自分が恥ずかしくなってくる。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります