本

『世の中のことがわかる数学の雑学』

ホンとの本

『世の中のことがわかる数学の雑学』
柳谷晃
中経出版
\1,365
2004.3

 一度どなたかにお聞きしたいが、昨今の書物の題は、何故に徒に長いのであろうか。この本は一応背表紙を参考に短くまとめてみたが、表紙にはやたらと修飾語句が並べられている。「これは役立つ!」に始まり、「トイチの怖さ、噂の確率など22項を読み解く」とあり、さらに「文系が数学したら社会のことがここまでわかる!」と記されて、その説明が続いていく。
 申し訳ないが、「これは役立つ!」の意味がよく分からなかった。というのは、この本に書いてあることをすでにご存知の方にとっては、分かり切ったことの説明ばかりが書かれてあることになるし、この本に書いてあることを知らない人にとっては、ちんぷんかんぷんで終わっていくような本に見えたからである。どちらにとっても、役に立たないのだ。
 出版社の関係であろうか、経済の計算に偏った関心のもたれ方がしてあるのは、まだよしとしよう。しかし、時に6000年前の歴史の説明を始め、微積分の創始の話から無限の集合論へ流れたり、カオスの話も現れる。それぞれの事柄に対して一定の知識なしには、興味をもって読み進められるものではない。数学的にこの項目の羅列には意味があるのだろうか。筆者は、「まえがき」で、この順番に構成がある、と記しているが、私にはよく分からない。むしろ、ばらばらに並べてあるから気に入ったものから読むように、とアドバイスしてあったほうが気楽になれる。
 雑学とはそういうものだと言われたらそれまでである。だがこのままでは、せっかく内容には興味深いものも拾われていると思うのに、読み手にとっては一方では当たり前すぎ、一方では訳が分からない、ということになりかねない。
 筆者の蘊蓄を並べただけだ、という見方が、読み方としては素直であるような気がするというのは、意地悪な読み方だったろうか。




Takapan
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