本

『数独はなぜ世界でヒットしたか』

ホンとの本

『数独はなぜ世界でヒットしたか』
鍛冶真起
メディアファクトリー
\1155
2010.3.

 パズル雑誌『ニコリ』は、スーパーの雑誌売り場にも並ぶほどにポピュラーになった。その後、週刊誌タイプのさまざまなパズル本が出てきたために、ニコリのような上質紙の本は、問題数が少ない上に高価であるような印象があるかもしれない。
 だが、質的には確かにいいし、信頼性もある。いや、日本ではどの出版社のパズルも信頼は置けるのだろうが、この本によると、たとえば中国のパズルはあやしいものが少なくないらしい。また、パズルに対する熱意あるいはこだわりといったものは、安いパズル本には企画できない性質のものではないかとも思われる。
 そう、これは、パズルマニアの物語である。
 数独について、ここで事細かに説明することは省く。だが9×9のマス目の中に1から9までの数字をひとつずつ入れていく"アレ"は、大抵の人が、一目見ると、アレか、と思うようなものとなっているのではないかと思う。
 これはもはや諸外国で"SUDOKU"で通用するほどのものになってしまった。数字だけ知っておれば、参加できる。言語の相違は問題にならない。どんな地方の子どもにも、無言で一度して見せればルールが分かる。そして、子どもでも、やってみようという気持ちになる。ことさらに知識はいらない。法則も定理も公式もない。ただただ違う数字が並ぶようにするだけである。実にシンプルだ。そして、実に奥が深い。出題方式により、イージーなものにもなりうるし、とびきりの難問になる場合もある。それでも、著者が言うにはこれは「お茶漬け」なのであって、何も人生に必要なものではない。だが、幾度となくそれを経てみたい思いに駆られ、時にはまりこんでしまう。誰もが魅力を感じるだろう、というのである。
 この数独の、いわば生みの親が、この著者である。そして海外にどうやってこのパズルが知られていくようになったか、著者しか知り得ない情報が、多々明らかにされていく。その意味で、数独というものについての背景が暴露されているとみてもいい。読者としては、ちょっとした蘊蓄になるかもしれない。
 それ以上に、パズルが好きだという情熱を感じ、あるいはまた、どこかアバウトなビジネスだなとでも見ておけば、それでよいのではないだろうか。
 楽しみは、ところどころに載っている名作の数々。時に簡単なものもある。巻末に解答はあるが、当然それは見たくないものの一つである。数独は、完成したかどうかは、自分でもチェックできるのであるから、この答えはなくてもよかったのではないだろうか。いや、それでは一部の短気な方々には我慢できないのだろうか。
 妙なところに疑問を感じてしまった。




Takapan
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