『全駅名ルーツ事典』
村石利夫
東京堂出版
\3150
2004.11
JRと第三セクターを全部網羅し、すべての駅名が取り上げられている。
なんと酔狂な企画だろう。そして、誰もこんなことを考えたことはなかったであろう。日本のすべての駅名の由来を解説した事典を作ろうなどと。
いわゆる鉄道マニアの手によるものかと思った。だが、日本漢字学会理事長という肩書きをもつ人がこれを著した。つまり、駅名はたいてい漢字であるが、その漢字のもつ意味を含め、その地の歴史や背景に則り、極めて簡潔な説明を施し続けたというわけである。
図書館で見て、私は迷わず借りて見ることにした。だが、司書からも声をかけられた。面白そうな本だ、と。
早速地元の駅を調べる。住んでいても、あるいは日々その駅を利用したり通過したりしていても、その謂われには全く気づいていなかったというから呑気なものだ。
京都や福知山の駅も調べる。興味が広がり、いろいろな土地に旅立ってゆく。ちょうど、時刻表一つで日本全国を旅することが可能なように、この駅名事典で、日本各地に行くような気がするのである。
しかも、その地の歴史や地理に十分通じていないと説明できないような事柄が、多々ある。よくぞこんな膨大な作業を、個人的に成し遂げたものだ。
各線の解説もふんだんに取り入れられ、鉄道マニアならずとも、興味深くどの頁にも目を落とすことができる。
誰もやったことのないことをする。本を出す冥利に尽きる事典であったことだろうと思う。いやはや、恐ろしい本が作られたものだ。著者の情熱にもまた、敬服する。