本

『星と宇宙のふしぎ109』

ホンとの本

『星と宇宙のふしぎ109』
村山定男監修・永田美絵著・八板康麿写真
偕成社
\1890
2010.12.

 小学生に読めるように配慮された本である。ふりがなも十分つけてあるので、低学年の子でも興味さえあれば必ず読める。
 著者は、NHKの「夏休み子ども科学電話相談」でおなじみの永田美絵氏。子どもに対する真摯な態度と、子どもの理解に的確な言葉を選んで短くまとめて説明する様子は、聞いていて立派なものだと常々尊敬していた。というのは、この番組でも、子どもには理解できない語彙を使って説明しつつ「わからないかなぁ……」と溜息をつく解説者も実のところいるからである。その番組での切れ味そのままに、この本でも、子どもが厭きない程度に短く、だがそのわずかな言葉で実に的確に要領よく、質問に回答するという形で本書は形成されている。その質問が、109あるということでタイトルになっている。
 章立てが、空・太陽・月・星・惑星・宇宙となっていて、子どもにとり身近なところからだんだん遠ざかっていくイメージで並べられているように私は感じた。豊富な美しい写真は、天文学の最先端のものも多く使われていて、解説と合致して説得力を増やす。また、言葉だけでは説明しづらいところを、視覚的に示すという役割を十二分に果たしているように見える。
 天文学や宇宙開発の歴史を正確に伝え、また現に分かっていることを、その発見や研究の時期と共に明らかにする。分からないことは分からないと説明することには、多少勇気が必要なのであるが、子どもたちに向かって、その問題を解決するのは君たちだと励ますような口調も実に気持ちがいい。興味をもってこの本を開いた子どもたちは、よい出会いを体験するのではないだろうか。本との出会いということは、このような本によって可能になるものなのかもしれない。
 新しい本である。だから、2010年の「はやぶさ」のこともちゃんと述べられている。今手にとって非常に楽しい本となっている。
 しかし古い話題も多い。星座は古代に見いだされていた48に加えて、新たに40が追加されたことも記されている。歴史的にはっきりしていることは、きちんと科学的に語られているから、この本自体を資料とすることも可能である。
 宇宙のことを考えるのは、私も小さな時から好きだった。そして、果てしない時間と空間を思ったとき、人生のはかなさを覚えて、同時に哀しくて泣くこともあった。この宇宙の美しさと神秘さとを目の前にすると、国と国との戦争が、むなしく見えてくる。私と隣人との憎しみも、ちっぽけすぎて話にならないものだと分かってくる。宇宙を見つめることは、平和を実現することにもちゃんとつながっている。私はそう感じていた。するとこの本でも、最後にはそこのところが、さりげなく、だが感じる者から見れば力強く、述べられていたのである。
 例によって、こういう本は大人が読むべきだと思う。一読すれば理解できる。また、私も知っていることばかりだろうと思ったら、最新の研究が随所にあって驚くことがいくらもあったし、古いことでも、デネブやベテルギウスの語の意味を示されて、へぇボタンを叩きたくなった(これも古いか)ほどである。だからやはり、大人もこの本をきちんと読んで、世界平和をまず自分から始めたいものだと思う。地味な本だが、この本は、それだけの意味と力を秘めている。




Takapan
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