本

『世界のステンドグラス』

ホンとの本

『世界のステンドグラス』
ピーピーエス通信社
ピエ・ブックス
\1890
2009.11.

 小さな本である。厚さは、ある。ちょっと価格が高いかな、とも思えるが、写真集であるから、そういうものかもしれない。黒を基調にした、シックなデザイン。中には、文章というものは、ない。最後に、それぞれのステンドグラスの出典が、教会名と国名というだけのシンプルさで小さく並べられているだけである。
 だから、これは言葉のない絵本のようなものである。黒い背景の中に、色鮮やかな光がどのページにもちりばめられている。読者は、それを眺めるだけである。
 今、教会名といったが、必ずしもすべてが教会であるというわけではない。美しいステンドグラスの写真が、ただただどんどん流れていく。とくにテーマとか秩序とかがあるようには見えない。きらびやかな画像を右から左へと眺めていく。その楽しみが、たぶんオシャレというものなのだろう。
 真正面からのアップで切り取られた写真も、多い。だがまた、そのステンドグラスのある風景をどう切り取ったら最も美しいかを考えた上で、効果的に切り取られた写真もある。特に前半はさまざまなアングルで紹介されていく変化が、美しい。
 およそ信仰には関係のないステンドグラスも数多くあり、純粋な美術品として見るのもいい。しかも、それらは実用的なものとして生活の中にある作品である。だから、私たちも少し視点を換えてみれば、生活の中に、美しいと言えるものがいろいろあるかもしれない。たとえば玄関のノブだけをいろいろ探し当てて写真を撮って並べてみても、案外ひとつの絵本ができることがあるのかもしれない。
 そんな楽しみも、ふと感じた。
 いや、とにかく美しい。ただ見るだけで、それでいい。




Takapan
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