本

『ひとりぼっちのねこ』

ホンとの本

『ひとりぼっちのねこ』
ロザリンド・ウェルチャー
長友恵子訳
徳間書店
\1365
2006.8

 絵本から、少し飛び出たような物語。絵が、素朴な線描きの、それでいて味のあるタッチによるイラストとなっていて、文字は大きく適度にちりばめてある。
 この感じは、個人的にたいへん好きなスタイルだ。
 短い童話であり、用事でも聞き通せるくらいの長さではないかと思う。
 わたしは白いネコ。可愛がられていたことしか知らない、まだ生まれて半年ほどのネコ。それが、捨てられてしまった。
 町の家へは連れて帰れないというのだ。
 ネコは苦労して野生の生活に適応しようとするが、どうしても逞しくはなれない。やせ細っていたところへ、以前一緒に遊んだくらいの歳の女の子に出会う。女の子はネコを飼いたいと言うが、あいにくそこにはすでにネコがいた。しかも、その大きなネコが、この白いネコを追い出そうとする。
 白いネコは、なんとかその家に近づくことは許されるが、結局外で寝るなどしなければならない。
 最後にどうなるかは、お楽しみにとっておこう。
 別荘にバカンスとして長期にわたって暮らすことが、外国ではよくあることであるらしい。しかし、その別荘生活の手慰みの如くに遊ばれた動物が、バカンスの終焉とともに無造作に捨てられる。そんなことも、少なくないという。日本でも、そのような話を聞いたことがある。
 実在のネコの姿に、想像力をたくましくして、作者はこの物語を書いたという。動物をオモチャのように捨てる人に、考え直してほしい、と願って。
 原題は「I WANT TO BE SOMEBODY'S CAT」である。




Takapan
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