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『まんが人物伝 チャールズ・シュルツ スヌーピーの生みの親』

ホンとの本

『まんが人物伝 チャールズ・シュルツ スヌーピーの生みの親』
監修:チャールズ・M.・シュルツ・クリエイティブ・アソシエイツ
KADOKAWA
\850+
2019.12.

 角川まんが学習シリーズはなかなか優れている。図書館中心だがいくつか手にした。その道の専門家の監修のもと、ある程度のフィクションも交えた上でだが、一読で分かりやすいように物語仕立てにしてあるし、必要な資料が写真などで提供されている。
 今回はラジオでその編集者がゲスト出演していたのを聞いてすぐに探したもので、電子書籍という形で購入した。何を隠そう、私は子どものころにスヌーピーと出会い、以来ずっと大好きなのだ。
 コミックス自体は難しい。それでも、鶴書房時代に何冊もお小遣いをはたいて購入していたし、スヌーピーの絵は何千書いたか知れない。谷川俊太郎さんとの出会いもこのシリーズを通してである。
 シュルツ氏のことも後に私がクリスチャンになってからだが、信仰豊かな人であったこと、従って私が聖書の世界に包まれてから後は、その難解と思われたコミックスの言葉や指しているものがぐんと身近になったことを知る。スヌーピーの中にキリストの働きすら見ることが可能になったのだ。
 ぼんやりとシュルツ氏の人柄については知るものはあったのだが、今回このマンガによる伝記を味わうことにより、一層近くに感じることができたような気がする。気の弱い青年が、うまくいかない自分の中にチャーリー・ブラウンを見出していたこと、それも赤毛の女の子に対する切ない熱い思いが実体験に即してこめられていたことを知ると、思わず涙が出た。
 キャラクターの名前は、仕事仲間から拝借したというわけで、当人たちはどう思ったのだろう。最初は抵抗があったのだろうか。しかしいまとなっては、世界中の子どもたち、いや大人たちもが、その名前を口にする。テレビでは新しいシリーズの短いアニメが放送されているが、「主役はみんなのチャーリー・ブラウン」と毎回オープニングで出てくるのが、なんだかいいなと思う。シュルツ氏の本心はそこにあるのだと思うからだ。
 父親の仕事ぶりを見ていたシュルツ少年は、好きな絵をあちこちに売り込む。そこはアメリカだ。自分の作品はきっといい、というポジティヴな気持ちで回るのだが、なかなか相手にされない。しかしいざ採用されると、人々に受け容れられる。そこはサクセス・ストーリーだ。
 子どもの心を忘れない大人が、どんな信仰でいたのか、それはさすがにこのような本では出て来ない。教会で語ることもありえたというその信仰の思いは、弱さを抱えた人の慰めになったのではないだろうか。
 ピーナツも半世紀、シュルツ亡き後は、描くことを託された人により受け継がれているが、絵柄としてよく気に入られているものの、果たしてその心がどこまで知られようとしているのだろうか。弱くだめなチャーリー・ブラウンに、誰とも違うことをするスヌーピー。彼らには友だちがたくさんいる。仲間がいる。ルーシーのように扱いにくい存在もあるが、悪役ではない。ルーシーは精神科医のようにカウンセリングに乗ってくれるのだ。そのアドバイスがはちゃめちゃであっても、構わない。ライナスの毛布はわが家の子にもあるのだし、シュレーダーの芸術は決してオモチャで片づかない世界をもっている。パティもずいぶんと弱さを抱えているし、こんなふうに挙げていくときりがないくらい、一人ひとりのキャラクターが生きて、その当たりを走り回っているようにも感じる。私はスヌーピーの兄弟などについては殆ど知らないのだが、犬の世界にもいろいろとあるようだ。
 読んでいくと、ちょっと切なく、そして笑顔になれ、また勇気をもらう。マンガが中心だが、子どもだけのものにしておくのはもったいない。どうぞ大人も、楽しみましょう。




Takapan
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