本

『スナップ写真のルールとマナー』

ホンとの本

『スナップ写真のルールとマナー』
日本写真家協会編
朝日新書063
\756
2007.8

 やはりスナップ写真ということだろう。肖像権などという言葉が一人歩きして、およそスナップ写真というものが撮影できないのではないか、と危惧する人もいるかもしれない。私もかなり気を遣う。
 子どもを撮影する中で、ほかの人も写りこんでしまうのは、もはや避けられないのである。
 だがまた、私が他人の撮影のファインダーに入っているな、と感じることもあるわけで、そのときには、たしかにちょっぴりでも、嫌だな、という気持ちが混じることがある。だとすれば、私の画像に入ってくる他人も、同様に不快に思うことがあるのだろう、という想像もはたらく。
 まして、これはサイトにアップロードする可能性のある画像である。私の場合はそれをギャラリーに展示したり、コンテストに応募したりすることはまずないだろうし、絵はがきやポスターのようなものとして発表されることも、たぶんないだろうと考える。また、もし少しでもそのような可能性があるときには、承諾を得ることを考えるだろうし、多分に、承諾を得る必要のない画像を選んでいくことになるだろうと思う。デジタルだと、そういう背景だけを外すことも可能なのであるから。
 それにしても、関心のある分野の大切な話である。
 読後感であるが、私が想定していた倫理観で、だいたいいけるのではないか、という気がした。ただ、場合によっては、私がいけないと理解していたことも、案外許せるものなのだな、と感じることもあった。
 写真家のプロたちの間でさえ、多少の意見の相違はあるみたいにも見えた。ということは、法的にかっちり定められているというよりも、気持ちよく互いに考える心のようなものが案外重視されており、解釈によって、権利に対する考え方も違ってくるものだ、という印象であった。
 撮影機能の付いた携帯電話のお陰で、片手をにゅうっと差し出す光景が多く見られるようになった。電車の中でただケータイでゲームをしているだけらしいと分かっていても、その向かい側の席に座ると、知らない間にこちらが撮影されているのではないか、と勘ぐるときも、ないわけではない。
 彼らの中には、カメラという趣味を経て撮影しているのではない人が少なくなく、当然カメラをそれなりにいじっていれば覚えていくであろう撮影のルールというものも、全く知らずに何でも撮ろうと動く人が、多く現れていることが予想される。デジカメにしても、それに近いところがあるかもしれない。
 こうした基準というものは、もっと広く知れ渡らなければならない。自転車の規則も知らずに乗っているとなれば、やはり問題が出て来るだろう。それを教えずして販売するところに一つの原因があるとするならば、ケータイにしろデジカメにしろ、その製品を製造に販売する企業の側が、十分その撮影にまつわる法やエチケットの問題を、教育しつつ販売しなければならないのではないだろうか。
 私の懸念している撮影についての叙述がなかったことと、私のようにモザイクをかけて特定困難な加工をした上で、ブログの小さな画像として使うことがどう解釈されるのかについてもついに答えられることがなかったことで、私はさらに突っ込んだ質問をしたみたいものだ、とも感じた。これだけのページ数を使っているのに、殆ど同じ質問やケースが繰り返し書かれているような印象があっただけに、そこが残念だった。
 それでも、この本は、常識的倫理として、もっとスタンダードなものとして作り直されてよい内容であった。




Takapan
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