本

『スマホ時代のリスクとスキル』

ホンとの本

『スマホ時代のリスクとスキル』
竹内和雄
北大路書房
\1600+
2014.2.

 内容は、2014年初めの時点でのデータを基にしている。となると、そこから一年たった現時点では、どれほどのスマホの普及があるか知れない。本に載せる最新の数字というのは、時とともに古くなる点が痛い。が、方向性としてはしばらく変わらないことだろう。なにより、そこに含まれる問題点というものは急激に変わるわけでもなく、本質を貫いている指摘であるならば、それはむしろもっともっと理解が浸透していかなければならないものであろう。
 対象は、ここでは子どもである。小学生などの普及の度合いの数字はここにある以上になっているものとして受け止めることにしよう。ただ、小学生が危険に晒されるケースは、まだ巨大なものにはならないだろうと思われる。なんだかんだいっても、小学生は親の管理下にあるものだからだ。ところが中学生あたりから怪しくなる。これが高校生となると、もう本人次第で、親の管理というものは全くないと言わざるをえない。できるなら、親の管理下にある小学生時代に、基本的なスタンスを叩き込んでおくことである。
 そう。ここには、実際のアプリやメーカーの名も挙げてよく分かるように説明してあるのだが、ありがちなように、それらがこぞって問題があるとか悪質であるとか、危ない危ないと煽るような言い方をするつもりは全くない。一概にネットはだめだと言い張るのでもなく、また、そもそもLINEなど知らず使ったこともないないままに批判したり子どもに禁じたりする親の味方をするわけでもない、という現実的な立場が強く響いてきた。実際、どこで線を引けばよいのか、どこに注意点を置けばよいのか、実用的な知恵が検討されている。これがいいと思う。
 事は、被害に限らない。なにげなく悪口をネットに流す、そこに、加害行為がなされることがある点にも注意を促す。これに気づいていないという点もままあることである。具体的にどのような法律に触れるかという点も挙げて、それが違法であり逮捕という現実もあるのだということを告げ、知らないでは済まされない現実を明らかにする。これは確かに子どもにはっきり伝えない内容である。被害がないから大丈夫なのではなく、無知の故に加害者となっていることをも防ぐ、それによって、被害者もなくそうという考えである。
 同様の危険性や問題点は、スマホを扱う大人、あるいはパソコンを扱うだけの大人でも変わらない。しかも、ある意味で生まれたときからネット環境にある世代と、大人になって初めて接した大人との間では、事情が違う。無知であることについては、大人のほうが厄介であることがある。
 教会で信頼のおける方が、ネットについて全く無知であるというケースに出合ったことがある。可愛いお孫さんの学校の発表かいを動画で撮影して、それをネットに公開しているのだ。そのことを聞いた私は、それはまずいことです、と説明をした。だが、ネット操作が面白くてたまらないその方は、「みんなやっていることだ」と反論し、ヘソを曲げてしまった。その小学校自身、発表会を動画公開はしている。だが、そこには、一定の公開基準というものがあると記してあり、すべて顔についてはぼかしをかけている。つまり、たしかになんらか配慮を施してあるものだ。もちろん、それでよい。だがこの方は、ぼかしをかけていない。そんなに顔が大きく映っているものではないと言うのだ。また、最初は小学校名をタイトルに書いていたが、いろいろ問題がありそうだから、最近は名前を外したから大丈夫だ、と言い張る。無知もいいところだ。私が試しに、その動画に出合ったとして、マニアにでもなったつもりで、どこの小学校なのだろうかと探ってみることにした。すると、ものの五分で、小学校名がばれたし、はっきり申し上げると、動画の撮影者の住所と電話番号もネットでその五分後にはっきりした。素人の私が検索したところでこの程度なのだ。その道のマニアの前には、どこまでその子どもたちを危険に晒したことになるのか、この方はまるで自覚されないのだ。それを私が説明しても、聞こうとされなかった。
 こうした無知を避ける必要がある。子どもたちがLINEを通じて、見知らぬ人を信用して実際に会うというようなことが、実のところ半数以上の子どもたちにとってある現実などを指摘されると、危険極まりないことが明確になる。女友達を騙っておいて、実は男であるなりすましなどにも、全く気づくことがないのだ。
 何もかもが危険であるというのも寂しい。利用すれば便利であるのは確かだ。車が事故を起こすからと言って、車をすべて廃止しなければならない、などというのは適切ではない。しかし、事故を起こす可能性があること、起こさないためにはどうすればよいのか、は、利用するための最低の知識であるだろう。また、事故を起こしてしまったときの対処の仕方も知っておかなければならないのはもちろんである。今のスマホやケータイについて、この部分がどこまでできているのか、欠けているのか、そこがこの本の問うところである。
 薄手の本であるが、読みやすいとともに、適切な内容がよく把握できるように編集されている。可能ならば、さらにコンパクト版ができて、極端に言えば学校で配布するというくらいにまで普及して戴きたいと思うほどの内容ではないかと思う。
 私もまた気をつけたい点を学んだ。誰しも、学ばなければならない。




Takapan
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