本

『村主章枝の フィギュアスケートここがわかればもっとオモシロイ!』

ホンとの本

『村主章枝の フィギュアスケートここがわかればもっとオモシロイ!』
村主章枝
PHP研究所
\1260
2010.11.

 ここのところ、日本人あるいは日系人の優秀な選手の活躍により、注目度がさらに増してきた、フィギュアスケート。スポーツコーチ目線で紹介する本はあったし、審判目線で追いかける本もあった。だが、こうもフィギュアスケートそのものを、選手の立場で紹介してくれるというのは、なんともありがたい本ではなかろうか。しかも、現役の選手である。まさに次の大会でも、この選手はどういう準備をして、どういう精神状態で、演技に臨んでいるのか、手に取るように分かるのである。
 本そのものは、しっかりした構成により構築されたという印象を与えない。気ままなおしゃべりや、インタビュー記事であるかのようにさえ感じられるふうである。そして、だからこそなお、ふんふん、と話を聞いているうちに、いつの間にか読み終えているといった気がするのだった。
 文章が上手であるのか、どなたかがうまくまとめたのか分からないが、ご本人でないと当然分からないことが次々と明らかになるわけであるし、実に分かりやすく、ここに与えられた情報は本当だろうと思われる。ストレスなく読めて、しかも内容がすうっと頭に入ってくる。スケートについて、全く何も知らないというほどではないにしても、まともな知識をもたなかった私が、この本を流し読みしただけでも、なんだかいろいろなことが分かってしまったような気がして、うれしくなったのである。これは、何故なのだか解明したいと思った。というのは、数学などの学習についても、このように、すうっと入っていけるような説明が可能であれば、ぜひ知りたいからである。
 そもそも「フィギュア」という名前が、コンパルソリーと呼ばれる、かつての「規定」演技から来ていることも、すっかり忘れていた。もう20年も前に廃止されていたのだ。
 選手がどういう心境でいるのか、もちろんそれは個人差があるだろうが、だからこそ、一現役選手が実際のところどうであるのか、ここまであからさまに記されていると、本当にすべての選手の心の中を覗くことができたような気持ちになってくるから不思議だ。
 ジャンプの区別も、初めて明確に知った。そして、たぶん多くの読者の目を惹いたと思われる、選手が年間にどれくらいの費用を必要としているか、ということも露わにされており、細かく見入ってしまったのだった。
 これは、フィギュアスケートの普及に、きっと役立つ役割を背負った本だろうと思う。また観よう、という気持ちになるし、もしかすると、スポンサーになりたい、と思う人が現れるかもしれない。知るということは、力になるのだ。知らせることは、支援する人を起こす働きが、きっとある。こうして内実をオープンにしていくことは、スポーツ界にとって良いことではないかと思う。
 しかし、そんな無粋な心配をよそに、楽しく無理なく読めることは間違いない。タイトルどおりに、この本は「オモシロイ!」と言える。




Takapan
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