本

『修道女スタイル』

ホンとの本

『修道女スタイル』
プロジェ・ド・ランディ
双葉社
\1680
2009.3

 いったい何者ぞ、と知らない著者だった。夫婦ユニットらしい。夫がライター、妻が写真やイラストといった分担のようだ。自らは「散歩家」と呼んでいる。直に歩き、訪問して、そうして出会ったものを記事にしていくということらしい。
 そういうわけで、これは教会を訪問したルポ、あるいは単に訪問記という理解をしてよさそうである。
 本文の中でも、信仰をもっているわけではないこと、どこか物珍しさで訪ねる目的があるため、入るときにもためらったことなどが記されている。この体験が、貴重である。クリスチャンは、自らもいつか過去に教会を初めて訪れた時があるはずなのだが、いざ信徒になってしまうと、初めて教会に来る人の気持ちを忘れてしまい、理解できないことがあるのだ。それでいて、どうして教会に人が来ないのだろうと不思議がったりしているのであるから、おめでたいこともある。
 美しい写真がたくさん紹介される。普通の夫婦が訪問しているだけのことなのだから、取材も、東京と関西そして長崎と限られている。大きな写真の下に紹介される呟きめいた紹介文は、決して他の解説の受け売りだとは思わせず、自ら歩いてまさに足で得た知識がそこで文章という形をとる。写真の美しさと相俟って、しばし詩的な空間を、読者も旅することができる。v  散歩がモットーである。教会のご近所のちょっとしたお店も紹介してくれている。
 キリスト教のことを、殆ど何も知らなかった二人が、足で訪ねて教会や歴史を紹介しようとしている。なんだ、それだけのことか、と思う必要はない。思わずへぇと唸って、ためになる記事もあったりするのである。
 まさに、歩いて訪ねたというその取材が温かく現れているのが、巻末に1頁だけ載せられているのだが、「教会を訪ねるルール」という十箇条。観光地気取りで訪ねるものではないという当然のことを教育してくれるかのように、読者に、訪問には一般的にどういうルールがあるものか、きちんと示してくれている。
 この気持ちが、うれしい。
 ただ、これはカトリックを中心とした方面の教会であって、プロテスタントではない。タイトルが「修道女」では、やはりプロテスタント教会を集めていくことはできなかったのであろうか。カトリックの雰囲気を求めて歩いたということのようだが、それとは違うタイプのプロテスタント教会を訪ねて、また本にして戴くというのはどうだろう。
 歴史にしても事柄の解説にしても、自分たちの関心に沿って、詩的に綴ったと言ってもよいから、ここからまた的確な知識を得るように読者は学んでみるのもよいだろう。ピンクの表紙といい、やはりお洒落に女性に手にとってもらいたかったのかもしれない、とも思った。




Takapan
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