本

『しらんぷり』

ホンとの本

『しらんぷり』
梅田俊作・佳子 作・絵
ポプラ社
\1575
1997.6

 百科事典のようなこの重い絵本にも驚かされるが、これが1500円程度の値段で売られていることもさらに驚くべきことだと感じた。
 そして、絵本と読んでよいのかどうかも、自信がなくなった。
 これは、いじめについて考える本である。独特の絵のタッチと語り方でぐいぐい引きこまれていくが、装丁のみならず内容もまた、重い。息が詰まりそうである。
 あらゆる社交辞令も但し書きもいらない。ストレートに、子どもの心として、叫びとして、あるいはまた呟きとして、語られている。これがたとえただの虚構であるとしても、そこに真実性を見出さない者はいないだろう。
 最初にいじめられていたドンチャンに対して、ぼくは決して手出しをしない。むしろドンチャンに同情している。いじめはいけないことだと、思っている。だが、それはドンチャンの味方として行動しないかぎり、ただの「しらんぷり」であり、ドンチャンのいじめに加担していくことになるのだ。
 理屈では、その説明は簡単である。だが、大人として私たちはどうか。私たち大人こそ、この「ぼく」そのものでないのか。
 いや、ここで小学生のいじめが描かれているようでありながら、これは、大人を含めた社会全体の姿ではないのか。
 最後にぼくが、三枚目な形でだが、罪を告白する。ここに、新しい出発があり、救いがあるとして描かれている。これはなんと福音的なことだろう。教会でもっと取り上げられ、語られ広められてよい内容ではないだろうか、と強く思う。




Takapan
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