本

『友だちに「死にたい」といわれたとき、きみにできること』

ホンとの本

『友だちに「死にたい」といわれたとき、きみにできること』
リチャード.E.ネルソン博士・ジュディス.C.ガラス
浦谷計子訳
ゴマブックス株式会社
\1260
2007.8

 表紙に、「大切な人の自殺を食い止める方法」というサブタイトルも記されている。こちらのほうが、原題に近い。自殺を防ぐ力、という言葉がそれである。
 実にデリケートに、実に心をくみ取った、すばらしい専門家の知恵である。感銘を受けた。
 いわば、この本が伝えている情報というのは、わずかなものである。自殺を口にした人の危機を真剣に受け止め、それを実行に至らせないことが、誰にでもできるというものである。しかし、その考え方を読者に、誤解なく確実に伝えるためには、これだけの多大な頁数を割いて、理解させなければならなかったと言えるのだろうと思う。それほどに、私たちは一般に、自殺について、誤った、そして危険な対処をしてしまう、ということになる。
 どうして自殺を思うかについて、自殺についての事実確認、自殺のサインはどういうものか、とくにリスクの高い人がいるのか、そうした知識に続いて、実際にどういうことができるのか、が丁寧に説かれる。
 口にする「死にたい」は、実は「生きたい」という内容の言葉であること、また、目の前のことから逃れることが本当の目的であること、そうした根本的な理解から、私たちは、身近な人の、取り返しのつかない結果を食い止めることができる、というのだ。この強い確信が、この本を支え、希望を紡いでいる。
 これは、十代の若者を念頭においたプログラムである。さて、アメリカにおけるこの考え方が、日本でそのままに活かせるのかどうか、それは私には分からない。日本では、若者もいるが、中高年の自殺の多さと深刻さがひじょうに目立つ。この本と同じコンセプトに基づく、日本版の注意点がまとめられてもよいかもしれない。
 どこか、カウンセラーとしてのキリストが、この本を書かせているかのような気もした。やはりそうした精神的背景が、どこかにあるのかもしれない。




Takapan
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