本

『仕事の教え方』

ホンとの本

『仕事の教え方』
関根雅泰
日本能率協会マネジメントセンター
\1665
2007.3

 ビジネス書であるので、ビジネスの場面が設定されているが、考えようによっては、いろいろな場所で応用できそうな話題である。
 教会でも、仕事の引き継ぎなどの問題が起こるし、教会学校で子どもたちに教えるというのも、無関係ではない。勉強を子どもたちに教えるということのためにも、参考になる話題である。
 これだけはおさえておきたい、というふれこみも表紙にある。そもそもが「仕事の基本」というシリーズである。
 およそ人にものを教えるとなると、当然知っていなければならないことが書かれているだけではある。それでも、ビジネスシーンだけを背景に設定した例文は、ビジネスパーソンにとって役に立つものであるかもしれない。
 つまりは、この本は「はじめに」と「おわりに」で十分用を足している。
 この本では、「本人が学ぶことを手助けする」「自ら考え行動できる人を育てる」「教えることで学ぶ」という三つの点が伝えたかった、と記してありますが、そうしたものでしょう。教え込むのではなくて、自立できる人間の育成へ。これが、要点だと思われます。
 そのために長々と本文で記されていることは、ときによく似たようなことばかりであったり、あまりにも常識的な振る舞いがご丁寧に説明されていたりと、本を厚くするのに役立っている。そこまでわざわざ記さなくても、というところまで書いてある。
 逆に言えば、懇切丁寧にこれでもか、と教え込まれたい人は、この本の全体を味わうがよいだろう。そもそもが先の三つの点をマスターしている読者であれば、もはや中で読むべきところは何一つない、という皮肉な結果が明らかになる。
 そうは言っても、時折、面白いかも、という提案が見られるので、なにもこの本が無駄だなどというつもりはない。ただ、もう少し薄くできただろう、という気はしないでもない。しかし、ある程度厚くないと信頼が増さないというので、なんとか厚みをもたせてきたのではないか、と推測する。
 きわめて初歩的なノウハウが詰め込まれた本である。もう少し精神的に大人の方は、やはり岩波新書の『教育力』が面白い。企業パーソンの育成係と、教育学をあらゆる面からがっぷり修めているブレインとは、目的も違うだろうが、質も違う。
 人間を、あまりにもステレオタイプ的に分けるやり方は、しょせん人間を歯車的に扱う企業というリヴァイアサンの方法なのか、という気もしてくる。
 余談だが、いきなり最初に出てきた「OJT」なるものについて、ついぞ説明がなかった。これくらいは常識で誰でも知っているだろう、と考えてのことなのだろうが、読み始めて私はいきなり、説明の仕方が不親切だなという印象をもった。濫用しているとまでは言えないが、本文にも、無説明でカタカナ言葉が飛び交っているのを見ると、ビジネスシーンの新人に対して、説明があまり上手とは言えないなと感じつつ、この「仕事の教え方」という本を読み進む私であった。




Takapan
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