本

『国語算数理科しごと』

ホンとの本

『国語算数理科しごと』
岩谷誠治
日本経済新聞出版社
\1575
2007.11

 子どもと話そう「働くことの意味と価値」――そういうサブタイトルが並んでいる。実の娘との会話を物語り仕立てにして、会社というものの原理を優しく説いている。一週間それについて考えていくというストーリーの中で、働くことが会社においてどのように運営されていくかが読みとれるようになっている。
 なかなかユニークな内容である。これだけのスペースをとって流す情報としては、あまりに少ない。しかし、受け取るほうがそれをたっぷり理解して受け取ることができるとするならば、その価値は小さくはない。私も、企業会計という考え方について実に整理されて分かりやすく心にはいるものだと感動したほどである。ここに、簿記の何たるかが初めて分かったような気がしたとしたら、この本は大変すばらしい役割を果たしたことになるだろう。
 仕事をするということを、約束を守るという原則で説明する。やや意外な形であるかもしれないが、昨今の擬装続きの社会を見ていると、約束を守り信用を得るということが、基本的でいかにできないものであるか、ため息をついてしまう。
 あまりに単純化したストーリーなので、これでよいのかという気持ちがしないでもないが、こうして子どもに対しても比較的分かりやすい仕方で説かれた本があってよいと思うし、それは私たちに大人になっても案外うれしい内容なのである
 金銭の問題ではなく、約束つまり信用の問題であるということが、丁寧に説明されている。それは巻末に零している通り、非営利団体については考えが及んでいないというのも事実であろう。しかし、儲かればという発想のもっと手前に、まず信用を得ようとする前提を確認することがなかったら、ますます商道徳というものが蔑ろにされていく虞がある。
 たとえ話も分かりやすくて、ためになる。そして子どもたちの専売特許にしないように、おとなもこうした本で理解しようではないか。




Takapan
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