本

『妻との修復』

ホンとの本

『妻との修復』
嵐山光三郎
講談社現代新書1934
\756
2008.3

 名の知られた作家でもあるから、イメージも読者それぞれにあるかもしれないが、そもそもこのようなタイトルの本を手に取ること自体、一定の年齢や経験を重ねた者しかありえないだろうという気がする。この著者だから読んでみようと思った人もいるかもしれないし、タイトルに興味をもったという人もいるかもしれない。
 男性向けの本であろうが、それにしても、内容は壮烈である。文豪たちの私生活の中からも、調べたことをあけすけに出して、様々な事例の一つとする。いったい、妻と修復をはかるには、どうすればよいのか。
 その問いが出てくること自体、もう危ないのではあろうが、著者にしてみれば、その問いは避けられない。男たるものは……と豪語するような一昔前からの時代の男たちだったら、そうもするだろうという事件が様々に紹介される。はたしてそれは今の時代に通用するのだろうか。
 科学者ではない著者は、それを証明するでもなし、一般的な原理として妥当性を検討するということもない。エッセイストとしての魅力を十分出すものとして、ただその時の気分に合わせて吠え続けるのである。そこに法則を見出そうとする読み方は、適切でない。だのにまた、この本は、まるで修復に法則があるかのように振る舞って書き続けられている。
 まあ、相当過激な響きがする事例ばかりであるから、少しばかり覚悟してから読んでください。
 面白さについては、いろいろな意味をこめて、面白いと答えよう。だが、自分の問題として照合するときには、かなりひきつった顔とならざるをえない。
 そもそも修復は、必要なのか。可能なのか。できるなら差し向かいにならず、同じ方向を見ることによって、生きていけたらいい、そんな弱気とも取れるような言い方でこの本は閉じられている。だが、その弱さの中にこそ、強さがあるのだと思われてならない。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります