本

『「お手伝いしましょうか?」うれしかった、そのひとこと』

ホンとの本

『「お手伝いしましょうか?」うれしかった、そのひとこと』
高橋うらら文・深蔵絵
講談社
\1450+
2019.7.

 こども向けに作られた本だが、大人にもまた知ってほしいことばかりだ。弱者と呼ばれるかもしれないタイプの方々に対して、何か助けたいという思いをもっている人は少なくない。ともに子どもは、それをしたいと思う場合が多いし、そのように教えられてもいる。四年生では何らかのハンディキャップを負う人との触れあいが、学習課程に入っている。そのため、手話というものにアプローチする機会も増え、関心をもつ子も増えた。本書は、いわばその学習を、さらに多岐にわたり拡げていけたらというもので、一つひとつ具体的に、まずどのように声をかけたらよいのか、というところから伝えていく。非常によい企画だと思う。
 目の不自由な人・車いすの人というのはよく分かるが、その次に赤ちゃんを連れた人というあたり、この本の求める領域が実に身近に、そして相当広い場面に適用できるように配慮されていることが分かる。耳の不自由な人・外国人旅行者・お年寄り、こうくるともはや家族の問題でもある。そして、ヘルプマークをつけた人・補助犬ユーザーというところまで行くのだが、最後のユーザーへの配慮というところへの着眼点には驚く。なかなか気がつかないのではないかと思うが、実際盲導犬がレストランに入るのを拒否されるなどのことは、いまの時代でも日常的に起こっていることなのだから、これは大切な視点である。しかも、そこに添えられたエピソードが、実際どのように子どもが声を出し、そしてレストランにその人が入ることができたかというようなものであり、実に爽やかである。
 子どもに伝えるには、とにかく分かりやすさが一番である。そして明るく、希望が与えられる書き方が望ましい。そういうものは、大人も実は求めているはずであるし、大人も分かりやすいはずである。すべての人に理解を求めるような内容なのであるから、まさに本こそが、バリアフリーであってほしいものだと思う。
 著者は児童小説を手がけた人で、命をテーマに執筆を続けているという。それで様々な立場への眼差しをもち、おそらく実際触れあっていることが多いのだろうと思うが、声を出せないような人々の声を出そうと努めているのではないかと想像する。きめ細かな思いやりの行きとどいた本となっており、考えるべき点を簡潔に網羅しているような気がする。写真やイラストもほどよく効果的に、そしてたっぷりと掲載されており、視覚的にも大切なことが伝わるようになっている。至れり尽くせりだ。
 声をかけていい。そういうアドバイスが、私たちを勇気づける。どう声をかけてよいか分からないが、まずはかけてみようという気持ちになる。ただし、目の不自由な人の場合には、声のかけ方というものがある。視覚的情報なしに声がくるのだから、声だけで状況が少しでも分かるように説明をしていかなければならない。相手の立場に立つという、基本的なことだが、このような場合にはそれがなかなか難しい。でも、子どもでもそのことは本書でよく理解できるようになるだろうと思う。
 こんな良質の本が発行される社会は健全だ。しかし読まれず埋もれてしまうならば、健全ではなくなる。どうか読まれてほしい。そのために、ここでささやかなアピールをさせてもらう。




Takapan
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