本

『スーパーの生鮮食品がお店に並ぶまで図鑑』

ホンとの本

『スーパーの生鮮食品がお店に並ぶまで図鑑』
上岡美保・大森良美
自由国民社
\1365
2007.8

 カラーでたいへん分かりやすい。写真が効果的にレイアウトされており、印象的なイラストも使ってある。なにより、生産者の顔が感じられるような描かれ方で、作物が、「穫れる」のではなく「穫っている」ことがよく分かる。
 野菜はその育て方の過程が写真で並べられる。旬のカレンダーが種を蒔くところから記され、日本と世界の産地上位が地図と共に示される。おいしい見分け方まであり、種類や生産事情などが語られる。
 食育という考え方に伴っての構成なのだろうが、実に見事な出来である。
 流通の仕組みの解説など、もう涎が垂れんばかりの内容である。
 肉の解体写真はちょっと可哀想になるほどであるが、これくらいの思いを抱いて当然であろう。もっと命を戴いていることを大切に捉えなければならない。料理に適した肉の部位も紹介され、これはもう蘊蓄どころでなく、まさに生きる力そのものとは言えまいか。
 魚については、叙述法を変えている。県別生産でなく、漁港の水揚げ次第となることもあるが、魚特有の、類似種の細かな解説が数多く続く。こうしてみると、やはり日本人は魚に詳しい民族なのだとよく分かる。私たちも、魚へんの漢字や魚の名前については、誰でもそうとう知っているものである。様々な漁法の図解も、実に分かりやすくて丁寧である。
 楽しくて仕方がないし、子どもとこの本を囲んでわいわい話し合うとなると、親子共々よい経験をしていくことになるだろう、と感心しきりである。
 ただ、ちょっと疑問がある。タイトルに「スーパーの」は必要なのだろうか。八百屋さん、魚屋さんを私は日頃から日常的に利用している。肉屋さんに行くこともある。それらはスーパーではない。ことさらにそれを除く理由は、あまりないように気がするのだが……。
 ともあれ、これだけのよい内容の本である。資料が古くなると販売できなくなる虞があると思うが、しばしば資料を更新し、新しい状況を紹介し、食品成分表のように世に出し続けて戴けないだろうか。見る人が見れば、これは各方面で活用される本であると思うからだ。




Takapan
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