本

『成功本はムチャを言う!?』

ホンとの本

『成功本はムチャを言う!?』
新田義治
青春出版社
\735
2008.8

 こうすれば成功する、の類だけが、いわゆる成功本なのではない、と著者は言う。出世を目指すための方法や、能力開発、ダイエット本もその部類に入る、というのだ。自分のようにすれば。あるいは自分の言う通りにすれば、あなたも成功するのだ、そんな声が聞こえてきそうな本の数々である。
 そういう本は、小さめの書店でも、たしかに数多く並んでいる。売れ筋だというわけである。よほど話題のものでなければ文芸本も殆どなく、もちろん専門書など置く場所もない小さな書店でも、いわゆるビジネスものというコーナーは幅を利かせているものであろう。
 そして、それらを手にした人が、みんな成功するのなら、こんなに楽なことはない。いえ、世の中は成功者だらけになって、さぞや幸福な世界になっていることだろう。
 では、なぜ成功本を読んでも、成功できないのだろうか。
 この観点から、こうした本を手に取る人の心理から始まり、その不確かなること、成功のノウハウなどというものも、人により適していることと不適切な場合とがある、という当たり前のことが忘れられている様などが、暴露されていく。
 たしかに、占いというものは、占われたことを真剣に重大に取り扱うのではなく、ちょっとした自分の戒めとして、そして自分流に生き方を選んでいくための素材として扱われることがある。成功本も、いわばその類なのであろう。全く気にしないというのは不安を覚えるが、それに忠実に従おうというほどの心も持ち合わせないような本なのである。
 この本の面白いところは、最後に、ではそもそも成功というものは何のことだろう、と問いかけることである。いわば、哲学的な問いなのだが、ひとりひとりの立場や考え方が違うことを背景にして、いろいろな「成功」観があることを明らかにしてくれる。
 だいたい言おうとしていることが分かるため、細かなところは読み飛ばして、いわゆる斜め読みができる本であったし、たとえ細かく読んだとしても、そのひとつひとつを実践していくほどに、考え抜かれたものでもないだろうと思う。
 成功者が、成功者の視点で、成功のコツを書き下ろしたからといって、読者はその成功者とは立場も違うし、たぶん観点も違う。自分はうまい汁を吸っておいて、自分のうにすれば成功する、などと呼びかけるのは、私から見れば、詐欺だ。そんな方法が、あろうはずがない。
 なにぶん、この本そのものが、成功を掴むための視点をもつ、成功者として綴っているものだから、この本自体、成功本と呼ばれて仕方がないことになる。成功本で損をしないという成功を与えるものという解釈である。
 行間が広い。また、内容的にも同じことが何度も繰り返し述べられているばかりで、言わんとしていることは実に少ない。そうした少ない情報量の提供のために出版したというわけだから、著者こそ、最も成功してうまくいった部類にいるのかもしれない。




Takapan
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