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『聖化の説教【新約編】: 牧師24人のホーリネス・メッセージ 聖化の説教シリーズ (JHA)[Kindle版]』

ホンとの本

『聖化の説教【新約編】: 牧師24人のホーリネス・メッセージ 聖化の説教シリーズ (JHA)[Kindle版]』
藤本満・飯塚俊雄他
日本聖化協力会出版委員会
\700
2015.10.

 最初に乗り出すまでは、どうかしらと躊躇をしていても、いざやってみると、なんだ、そういうものなのだと分かってきて、よし、とばかりにどんどん突き進んでいけるようになる。人間が、新たな事態に遭遇したとき、また新たな課題に挑むときというのは、そういうものである。当たって砕けろではないが、とにかくまずひとつやってみなければ、始まらないというわけだ。
 電子書籍も、当初はなんだか周囲の様子見のような中で始まっていた。私は、いち早く電子書籍に手を出した。そういう技術については新しいものが好きなところがある。昔もワープロが個人用に出たときには、すぐに買った。奨学金もつぎ込んだ。今にして思えばたいへんな金額であったのだが、それだけの価値はあると思われた。パソコンなんかもそうだった。そうまでコストを費やさなくてもよかったのではないか、とも思われたがね自分としては、それでよかったと思っている。もちろん、なんでもかんでもではない。私の場合は、知的生産に関するものだ。音楽を聴くだけのものにそういうお金のかけ方はしない。
 さて、kindle。私はReaderを最初に買ったから、kindleにはなかなか入らなかった。それがまあいろいろあってkindleにしてその手軽さに驚いた。さて、キリスト教関係の本を探してみよう。当然そうなる。Readerは貧弱だ。それどころか、やたら本を売って稼ぐ思いつきの宗教的思想の本ばかり並んでおり、Readerへの信頼は全くなくなった。その意味ではkindleにもそれはあるが、検索上弾くことが簡単にできる。
 話がなかなか進まない。kindleにおけるキリスト教関係の本、とくに礼拝説教のようなものがあるかというと、確かにある。中には、私よりは知識が深いがどこか素人っぽい個人的試作や信仰を綴ったような形のものもあるので、見分ける力が必要なのだが、しっかりした伝統や組織背景をもつものの場合、それを権威主義という観点から捉えるのではなくて、ある程度の信頼度という意味で受け止めることにすると、やはりそこは覗いてみても損はあるまい、という気がするものである。
 それで、いくつか当たってみると、それがどうしたことか、同じ教団のものがずらりと並んでいる、その他の教団のものはというと殆ど見当たらない、ということになっていた。
 結論として、もっと様々な教団や組織が、kindleに向かってほしい。この電子書籍は手軽であり安価な印象がある。そこに、キリスト教関係のコンテンツを、もっと増やしてほしい。キリスト教書店が危機を迎えているというのは、今に始まったことではないが、近年、書籍の売上げ減と通販型書店の台頭により、ますます大変であると思う。私だって、電車代やバス代を多額使って、時間も使って、キリスト教書店に行き、あげく見当たらなかったなどということを経験すると、早ければ翌日、遅くとも数日後に書籍代の他無料で、そしてポイントまでついて値引き感のあるままに送ってくるという魅力には勝てない実情がある。電子書籍だと、紙書籍より多い部数が、しかも読者に品切れ意識をもたせることなく、提供できる。いくらか安価にするといっても、それは書籍を製作するコストの中に消えてしまうものではないだろうか。需要は高まるはずだ。
 この本については何も触れることができないままにここまで来た。長い副題のままでずばり説明は尽きている。いろいろな牧師が語るので、個性も味わえる。どこかに、読者その人の心に響くものはきっとあると思う。新約聖書を題材にして、きよめが語られる。この「きよめ」について馴染みのない方々には、少し「?」と思わせるかもしれないが、私はそれに親しんでいるタイプなので、ずんずん読めるものだった。あまりにもそれを強調しすぎるのもどうかと思うが、ここにあるのは、聖書の釈義や神学というものではなく、私たちの信仰生活をいきいきとさせる、いのち輝かせる魂の元気のようなことだと言えばよいであろうか。心がすっきりしていく、そんなふうにお考えであってもいいと私は思う。聖書から、光が射してくるような体験をもつ可能性のあるメッセージ揃いである。
 私のお勧めは、一気にいくつも読むのでなく、一日あるいは一度に、ひとつのメッセージだけを読み、そこで閉じることだ。そのひとつの聖書とメッセージに、しばし思いを巡らすような日常生活を間に置いたほうがいいと思う。その中で熟成されるものが、きっとある。いのちのことばというものは、そういうものであるはずだ。




Takapan
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