本

『家庭でたのしむ科学の実験』

ホンとの本

『家庭でたのしむ科学の実験』
大山光晴
角川選書387
\1470
2005.12

 イラストや図解がいっぱい載った、子どもを喜ばせる科学の実験の類の本が、よく出回るようになった。そのための、ほとんど「伝道」と読んでよいほどの仕事をしている方もいらっしゃる。子どもたちに、科学の楽しさを伝えたい、というのである。
 各地の科学館もそれに貢献しており、福岡では、九州電力や西部ガスも、そのためのミュージアムをわざわざ多大な出費を伴いつつも開いている。それらは、無料で開放できるほど、簡単なことではないのだ。
 ここに挙げた本は、おもしろ実験のようなレベルを超えている。不思議な現象についても、いわゆるマニュアル的な説明ではなく、その理由――原因と結果――についての十分な理解を伴いつつ読み進まなければ納得できないような書き方がしてある、と言ってよい。それが、一般的には不親切に見えるかもしれない。
 中学理科くらいの知識では、戸惑う説明が多々あることだろう。でも、臆病になる必要はない。ここにあるのは、高度な科学実験を、百円ショップの材料あたりで手近に実現してしまおう、という、なかなか味わえないチャンスなのである。
 どうせ全部の実験を真似できるはずがない。ぱらぱらとめくっているうちに、「おおっ」と手が止まる内容のところがあるはずである。ワイングラスのハーモニカくらいだったら、今すぐ台所に行ってやってみることができるのだ。ざるからこぼれないコップの水も、まさかと思いつつ、ついやってしまいそうである。また、コンセントから電線を引くだけでサンマを焼くなど、危なっかしいけど本当にできるかなあ、とやってみたくなる。だんだん面白くなってくると、CD一枚で分光器が作れるというのにも手を伸ばしたくなるかもしれない。
 お遊び的な楽しい理科実験シリーズから一歩踏み出てみたい人には、お勧めしたい。私など、これは教会学校で使える、と密かに肯いているのである。




Takapan
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