本

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』

ホンとの本

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』
山田真哉
光文社新書191
\735
2005.2

 まず、タイトルが巧い。
 何の話だろう。サブタイトルには「身近な疑問からはじめる会計学」とある。「はじめる」すら漢字にしない巧さがある。ひらがなにしたために、「会計学」であることが響くではないか。
 難しいとされる会計学。経営理論はどうやって成り立つのか。素人には、これほど分かりにくいことはない。どうして儲かる会社とうまくゆかない会社とがあるのか。たんにブームとか運とか呼ぶよりも、無知からくることも多いだろう。それを、やたら演繹的に理路整然と説明する方法をとらずに、帰納的に具体例をもって謎解きをするかのように読者を導いていく。
 かなり売れているらしいが、その理由も分かる気がする。
 さて、さおだけ屋についてのタイトルそのものは、冒頭の章で解決されるわけだが、ここでその種を明かすような無粋なことはしたくない。ただ気になるのは、さおだけ屋の中に悪徳な売り方をする例が解答の初めに書かれているために、どうもその印象が読者に残りやすいことだ。著者が思う以上に、さおだけ屋=あくどい、というイメージができてしまうような書き方となってしまっている。私がさおだけ屋であったら、文句を言うだろう。
 とはいえ、複雑な経営理論のうち、いくつかの基本的な考え方について、これほど楽しく解説されている本も、たぶん珍しいだろうと思う。
 私はたとえば、小中学生に、社会科を教える必要があるときには、こんな言い方をする。「人間、金儲けのためなら、どんなことでも考えだし、実行するものだ」と。そのために、どうしたら儲かると思うか問いを投げかけさせ、促成栽培や高冷地農業の意味や特徴を理解させていくのである。
 畑は違うが、著者がこの本でやろうとしたことも、いわばこういったスピリットであったのかもしれない。だから、私は共感を覚えたし、その若さからしても、予備校の講師のような歯切れの良さを認めたいと思う。




Takapan
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