本

『算数を忘れた国の冒険』

ホンとの本

『算数を忘れた国の冒険』
正木孝昌監修
学校図書
\1,200
2004.1

 全部で3巻ある。「考える力を育てる学図のGAKU-MAN 遊々算数アドベンチャー」のシリーズだという。1・脱出編 2・救出編 3・謎解明編 と銘打って、全編マンガで算数のRPGを楽しんでいくかのような構成となっている。
 分厚い割には内容が少ないのは当然である。マンガも質が粗い。だが、内容が実にしっかりしている。わり算が始まるあたりから、だんだんレベルが上がり、最後は六年生の算数のレベルをしっかり捉えている。しかも、その謎解きが楽しい。
 正直、私も、「なるほど」と思う考え方が、各巻に見られたのだ。それは、「なるほど、こんなふうに教えれば楽しく理解できるではないか」という意味である。それは塾の特権のようなものでもあった。何しろ学校では一週間かけて発見していく知識を、塾では1時間の授業の中で印象づけなければならない。学校のようにじっくり見つけ出していくのが正解だろうと思うのだが、こちらはこちらで鮮やかに展開していかなければならない。舞台芸人のように、短い時間で教えるための、学校とは別の技術が要求される。そんな場で、明解な説明がどれだけ求められていることか。そうした説明が、実はこの本には随所に見られるのである。
 どうりで監修者は、小学校の現場で優れた模範授業とされた「正木の算数授業」を紹介した本人ではないか。そして物語に登場する、生徒に嫌われている「ゴリラ先生」というのが、正木先生本人なのであるからしゃれている。
 そのゴリラ先生は、謎のゴリラ先生として、不思議の国にも登場する。その博士が、冒険のクライマックスで子どもたちに語る。
 「自分で考え、行動する、その大切さと楽しさを、算数を通して人々に思い出させてほしい。」
 このメッセージは、私の願いに近い。
 3冊揃うところに意味があるが、個人で購入するのは少しばかり痛いかもしれない。学校の図書館には、ぜひ導入をして戴きたい本の一つであると思った。




Takapan
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