本

『大人の算数 子どもの数学』

ホンとの本

『大人の算数 子どもの数学』
小林吹代
すばる舎
\1,400
2004.1

 
 受験の算数は難しい。苦手意識を感じる子は少なくない。第一、「国語が苦手」というのはいかにも恰好悪いが、「算数が苦手」というのはちょっと可愛くて恰好いいみたいに思われる風潮がどうかしている、とも思う。そんなことがあるのかって? あらゆる調査が物語っているではないか。算数・数学や理科が苦手な子、とくに女子がどれほどたくさんいるか。そして、「私は数学と理科が好きです」と口にする女子が、いかに奇異に見られることか。
 難しいから、「1」が分からなければ「2」も分からない、と安易に信じられている。違うと思う。「1」が分からなければ、「2」に行ってみるといい。それでも分からなければ、「3」に行ってみてもいい。すると、その人にとっては「3」が分かりやすくて、納得できて、そこから「1」や「2」も「なあんだ」と理解できるようなことが、しばしばあるのだ。
 この本も、算数が小学生までで、大人は数学をするものだ、という単純な思いこみには賛成しない立場である。どこからどのようにかじっても、楽しめるのが数学的考え方というのではないか。私たちが興味深い気持ちになれる題材がいくつか選んであり、そのどれもが最新の数学と呼んで差し支えないような世界を示してくれている。黄金比やファボナッチ数列は、自然界の不思議と重ね合わされるように述べられていく。フラクタルについて実践を通して説明されていくのは、実に楽しい。
 こうした企画で本を作ると、どうかすればあまりにマンガ的に興味本位だけで描かれて、肝腎の理論については説明不足というケースがある。また逆に、あまりに知識を欲張って書き込んでいくと、読者がついていけずに挫折してしまうというケースもありうる。その微妙なところを突いてくるのが、この本のよいところである。
 もっとも、それでも小学生には理解しづらいものがある。「子どもの……」と掲げているわりには、知識としては中学生以上のものを要求する頁がかなり多い。その意味では、やはりこれは、「大人の」遊びとしてとらえた方が自然であるのかもしれない。




Takapan
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