本

『算数の教科書』

ホンとの本

『算数の教科書』
栄光ゼミナール編著
新星出版社
\1575
2010.4

 以前、これの音楽バージョンについて触れた。小学生のよくあるつまずきと苦手がなくなる40の方法。これが付せられている。音楽は音楽の教師であったが、今回は栄光ゼミナールという塾が制作。受験の算数も扱うと同時に、小学生が陥りやすい迷路の仕組みや、そこから抜け出すためのコツがてきぱきと的確に指摘されている。
 一口に、算数の参考書といっても、目的や内容に応じて、実に様々な種類がある。受験など全く気にしないタイプの子のためのものもあるだろうし、計算が嫌な子にとって、あるいは文章題に難がある子にとって、図形がどうもという子にとってなど、押さえるべき箇所が違うだろうと思うのだ。家庭の医学などという本のようだ。必要な頁は、決して全部ではない。しかし、算数の場合には、全体を見渡して戴くのが適切である場合が多い。直接患部ではなくても、関連事項が多々あるからだ。
 この本は、もちろん中学受験の内容を押さえている。だが、そのかなりの高度な部分だというわけではない。それでも、高度な問題を解くための基本は、しっかりと触れられている。応用項目を説明しているとは言えないが、応用するために必要な点を載せている、ということだ。だから、この本を徹底することによって、実に有望な受験準備をすることができると言ってよい。というのは、ここには、ある概念の形成や、解けるようになるための適切なとりかかりが、カラーの図をゆったりと用いて、分かりやすく示してあるからだ。あるいは、親がこの本で学習して、そのことを子どもに伝えることができるのなら、それでもよい。感情的に難しいかもしれないが。
 しきりに受験、受験と言ってみたが、必ずしも受験目的であるとも言い切れないと実は私は感じている。子どもたちが陥りやすい難点が的確に挙げられているので、たとえば中学年で小数や分数の理解で困っている場合、この本の解説が、その悩みに効果的に答えてくれるということを期待できるからである。
 学年の見出しがあるのもうれしい。上級学年でない段階から利用できるからである。その意味で、小学生にとって、息の長い、よい参考書であるとも言えるだろう。説明の仕方は、さすが塾が編集とあって、塾らしく、コンパクトで面白い解説となっている。私から見れば、ときおり、別の説明のほうがより分かりやすいと思えるところもないわけではないが、それはまた私の持ち味でもあるから、この本の価値を落とすようなことがあるわけではない。
 だから、ただ受験のために、と焦ることなく、本当の実力をつけたい場合には、中学受験を狙おうが狙うまいが、楽しく開き、また理解できる、なかなかよい一冊ではないかと思われるのだ。




Takapan
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