本

『作家養成塾』

ホンとの本

『作家養成塾』
若桜木虔
KKベストセラーズ
\1470
2004.11

 プロの小説家になるための本だという。だとすれば、本当の需要はわずかなものと思われるが、それなりに人目をひくことも間違いない。
 そもそも文学が衰退したなどと言われる中で、小説を書きたいという人は着実に増えている。インターネットの普及で、自分の考えが手軽に発表できるようになった時代の環境もある。何かを書いてみたい。小説なら書けるかもしれない。そんな思いを抱かせるのに十分な情報が世の中に流されている。たとえそれが、宝くじに当たるくらい難しいことだとしても、自分には文才があるのではないか、とか、テレビドラマを見ていて自分もこんなストーリーを思いつくことができるのだぞ、とかいう気持ちで、自己表現をするのだそうである。
 ネットの記述、とくにブログと呼ばれるものは、ますます個人が文章を書くことを日常的なものに変えていった。
 エンターテインメントの作家を目指す人に、文章教室を施している著者が、今回は、やや上級に至る面でのアドバイスを、ここに発表するに至った。
 創作活動における、ちょっとしたコツのようなものを、実際の習作に突っ込みを入れるような形で、具体的に説明している。抽象的な助言と異なり、非常に分かりやすい。この辺りも、画期的な指導となっている。
 プロの作家志望の人だけが読むべき本ではないだろう。ちょっと文章を書くときに何に気をつければよいのか。ネットに文章を載せているがもっと巧く書くにはどうすればよいか。文章を書くというのは、きわめて日常的なものであると考えるならば、この本の知らせることは、意外と守備範囲が広いかもしれない。
 最終章では、持ち込みで出版してもらうための粘り腰などが披露されている。だが、本当に持ち込みなど見てもらえるのだろうか。出版界の現実についても、分からないことばかりなので、私はなんとも判断できない。持ち込みをなくすために、文学新人賞などを準備しているのが標準なのだ。
 公式的な説明は、無味乾燥なものかもしれない。だが、肝に銘じやすく、役に立つことは間違いないだろう。まとまった文章を書く必要のある人なら、誰にでも「そうか」と言わせるような本である。それはマニアックであると同時に、素人が気づきにくいことである。




Takapan
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